鉄の亜鉛鍍金(めっき)とは?種類と特徴をわかりやすく解説
金属加工.comをご覧いただき、誠にありがとうございます。
本サイトは、山梨県・長野県にて切削加工やろう付けを行っている 北東技研工業株式会社 が運営しております。
金属加工に関するお困りごとがございましたら、ぜひお気軽に当社までご相談ください。
亜鉛めっきとは
鉄は強度が高く加工性にも優れた金属ですが、水や空気に触れると酸化してサビが発生します。このサビは鉄の表面を侵食し、時間が経つと強度低下や穴あきなどの劣化を招きます。そこで、鉄を腐食から守るために表面を亜鉛で覆う処理が「亜鉛めっき(Zinc plating)」です。
亜鉛は鉄よりも酸化しやすい性質を持っており、鉄表面に犠牲防食作用を与えます。つまり、鉄の代わりに亜鉛が先に酸化することで鉄本体の腐食を防ぐ仕組みです。亜鉛めっきはコストパフォーマンスに優れ、建築資材、自動車部品、家電製品、ボルトやナットなど、幅広い分野で利用されています。
亜鉛めっきの防錆メカニズム
亜鉛めっきの防錆作用には、「バリア効果」と「犠牲防食効果」があります。
バリア効果とは、亜鉛の皮膜が鉄表面を空気や水分から遮断し、酸素との反応を防ぐ働きのことです。一方、犠牲防食効果は、もし皮膜に傷がついて鉄が露出しても、周囲の亜鉛が先に酸化することで鉄の腐食を抑える現象です。
この2つの効果によって、亜鉛めっきされた鉄は長期間にわたりサビに強い状態を維持できます。特に屋外環境や湿気の多い場所では、亜鉛めっきの有無で耐久性に大きな差が出ます。
亜鉛めっきの主な種類
亜鉛めっきにはいくつかの方法があり、用途やコスト、求められる性能に応じて使い分けられます。ここでは代表的な4種類を紹介します。
電気亜鉛めっき
電気分解を利用して鉄の表面に亜鉛を析出させる方法です。仕上がりが非常に美しく、薄く均一な膜厚が得られるのが特徴です。主にボルトやナット、家電部品など、外観品質を重視する用途に適しています。
しかし、膜厚が薄いため防錆力は比較的低く、屋外や湿潤環境では耐久性が劣ります。そこで、クロメート処理(後述)などの表面処理を組み合わせて耐食性を高めることが一般的です。
溶融亜鉛めっき(ドブづけめっき)
鉄製品を約450℃の溶融亜鉛浴に浸けて皮膜を形成する方法です。厚く強靭なめっき層が得られ、非常に高い防錆性能を持ちます。屋外構造物、橋梁、ガードレール、配管、建築用鋼材などに多く用いられています。
溶融亜鉛めっきの欠点は、電気亜鉛めっきに比べて外観がやや粗くなる点と、寸法精度が必要な部品には不向きな点です。それでも、耐候性を重視する場面では最も信頼性の高い防錆方法の一つとされています。
機械亜鉛めっき
微細な亜鉛粉末を鉄表面に機械的に衝突させて皮膜を作る方法で、「メカニカルプレーティング」とも呼ばれます。電気を使わないため、非導電性部品や複雑形状の製品にも均一なめっきが可能です。
また、水素脆化(後述)のリスクが少ないため、高強度ボルトなどにも採用されます。電気めっきよりも防錆力が高く、外観も比較的滑らかです。
溶射亜鉛
金属亜鉛を高温で溶かし、圧縮空気で吹き付けて皮膜を形成する方法です。厚膜で耐食性が高く、溶融めっきと同等の防錆効果を得られます。主に大型構造物や補修用途で使用され、現場施工にも対応できる点が強みです。
クロメート処理との関係
亜鉛めっきはそのままでも防錆効果がありますが、さらに耐食性を高めるために「クロメート処理」が施される場合があります。クロメート処理とは、亜鉛皮膜の上に酸化クロムなどの保護被膜を形成する化学処理で、白錆の発生を防ぎ、見た目の美しさも向上させます。
代表的な種類には以下のものがあります。
- 有色クロメート(青色・虹色):最も一般的で、コスト・防錆性のバランスが良い
- 三価クロメート:環境負荷の低い処理で、RoHS対応として採用が進む
- 黒色クロメート:意匠性が高く、家電や装飾部品などに使用
- 無色クロメート:銀白色の外観で、見た目を重視する部品向け
かつて一般的だった六価クロムクロメートは、環境・人体への有害性から現在では使用制限がかかっています。そのため、近年は三価クロムタイプが主流です。
亜鉛めっきの長所と短所
長所
- 防錆効果が高い(犠牲防食により鉄の寿命を延ばせる)
- コストが安い(他の防錆処理より低コスト)
- 再加工が容易(切断・溶接などの二次加工にも比較的対応可能)
- 外観性が良い(電気めっきなら光沢のある仕上がり)
短所
- 高温環境に弱く、200℃を超えると皮膜が劣化する
- 湿潤環境では白錆が発生する場合がある
- 厚膜処理では寸法精度に影響する
- 溶接時には亜鉛蒸気が発生するため注意が必要
水素脆化への注意
特に電気亜鉛めっきでは、水素が金属内部に侵入して材料の靭性を下げる「水素脆化」が問題になることがあります。高強度ボルトやスプリングなどで破断事故の原因となる場合があるため、通常は「ベーキング処理(脱水素処理)」を行い、水素を除去します。
亜鉛めっきと他の防錆処理の比較
防錆方法には亜鉛めっきのほか、塗装、ニッケルめっき、亜鉛アルミ合金めっき(ダクロ、ジオメットなど)などがあります。これらの中で、亜鉛めっきはコストと性能のバランスが最も優れている点が特徴です。
たとえば塗装は美観に優れますが、膜が破れれば腐食が進行します。一方で、亜鉛めっきは犠牲防食作用があるため、多少の傷がついても鉄を守り続けることができます。したがって、コストを抑えつつ長期耐久性を確保したい場合、亜鉛めっきが第一選択肢となることが多いのです。
亜鉛めっきの用途
亜鉛めっきは、私たちの身の回りのあらゆる場所で使用されています。
- 建築部材(鉄骨、フェンス、手すりなど)
- 自動車部品(ボルト、ナット、ブラケットなど)
- 家電製品(筐体、内部金属フレーム)
- 電子部品(シャーシ、取付金具)
- 農業資材、屋外設備
特に屋外構造物では、溶融亜鉛めっきによる高い耐久性が評価されています。適切な条件下では、50年以上サビを防ぐことも可能です。
環境対応の動向
近年は、環境規制の強化により、六価クロムを使用した従来のクロメート処理から、三価クロム処理やノンクロム処理への移行が進んでいます。また、溶融亜鉛めっきでも、エネルギー効率の高い設備やリサイクル亜鉛の利用など、環境負荷を低減する技術開発が活発に行われています。
まとめ
亜鉛めっきは、鉄の腐食を防ぐための最も基本的で効果的な表面処理です。電気めっきや溶融めっきなど、多様な方法があり、用途に応じた選定が重要です。コスト、見た目、耐食性のバランスを考えながら最適な方式を選ぶことで、製品の寿命を大幅に延ばすことができます。
今後も環境規制対応や高性能化の流れの中で、亜鉛めっき技術はさらに進化を続けていくでしょう。
いかがでしたでしょうか?
金属加工.comでは、他にも金属加工関連の情報を発信しております。他にも気になる記事がありましたら、是非ご覧ください。
金属加工.comのトップページはこちら↓

関連記事はこちら↓

