未分類

ろう付けの検査基準と合格判定の考え方

mw2pp0jd6c

金属加工.comをご覧いただき、誠にありがとうございます。
本サイトは、山梨県・長野県にて切削加工やろう付けを行っている 北東技研工業株式会社 が運営しております。
金属加工に関するお困りごとがございましたら、ぜひお気軽に当社までご相談ください。

ろう付けは、金属部品を高い精度で接合するための重要な工法です。しかし、接合品質は外観からだけでは判断が難しく、目に見えない内部欠陥が強度不足や製品不良につながることもあります。そのため、ろう付け後には厳密な検査と評価を行い、製品が基準を満たしているかどうかを判定する必要があります。本記事では、ろう付けの検査基準と合格判定の考え方について、わかりやすく解説します。

ろう付けの品質検査の目的

ろう付け検査の目的は、接合部が設計通りの強度・密封性・導電性などを満たしているかを確認することにあります。単に「接着している」だけではなく、「信頼性を維持できる接合」であるかを保証することが求められます。

製品用途によっても要求される品質は異なります。例えば、電子部品では導通性や耐熱性が重視され、配管や熱交換器では密封性や耐圧性が求められます。したがって、検査項目や判定基準は、使用環境や安全要求に応じて設定する必要があります。

ろう付け検査の主な種類

ろう付けの品質を確認する方法には、「外観検査」と「非破壊検査」「破壊検査」の3つに大別されます。

外観検査

最も基本的な検査方法であり、肉眼または拡大鏡を使用して接合部の状態を確認します。以下のような項目がチェックされます。

  • ろうのぬれ状態
  • ろうの回り込み(フロー)の均一性
  • ピンホール、気泡、割れの有無
  • ろうのはみ出しや不足
  • 酸化や変色の有無

外観検査では、ろうが均一に流れており、隙間がなく滑らかな接合面が形成されていることが重要です。特に、フラックス残渣や酸化膜が残っていると、後の腐食や強度低下につながるため、注意が必要です。

非破壊検査(NDT)

外観検査では見えない内部欠陥を検出するために用いられる方法です。代表的なものには以下があります。

  • X線検査(放射線透過検査):内部のボイド(空洞)や未接合部分を確認できる。電子機器や航空部品で多用される。
  • 超音波探傷検査:音波を用いて内部欠陥の有無を確認。厚みのある構造物に有効。
  • 浸透探傷検査:表面の微細な割れやピンホールを、蛍光浸透液を用いて検出する。
  • リーク試験(気密試験):加圧ガスや真空を利用して、気密性の有無を確認する。

非破壊検査は製品を破損させずに品質を確認できるため、量産工程や高価な部品の検査に適しています。

破壊検査

試験片やサンプルを実際に破壊して、内部のろう回りや接合強度を評価する方法です。一般製品ではなく、試作や品質保証の一環として行われます。

  • 引張試験:ろう付け接合部を引き離し、破断荷重を測定する。
  • せん断試験:重ね合わせた接合部にせん断力をかけて破断強度を確認する。
  • 断面観察:顕微鏡で断面を観察し、ろうの浸透状況や欠陥の有無を確認する。

破壊検査は定量的なデータを得られる一方で、部品を再利用できないため、主に品質管理の検証用に行われます。

ろう付けの検査基準の設定方法

検査基準は、製品仕様・使用環境・安全性などの要求事項に基づいて設定されます。主な評価項目は以下の通りです。

外観品質の基準

  • ろうが全周に均一に流れていること
  • ピンホール、割れ、ブリッジ、はみ出しがないこと
  • ろうの厚みが適正で、過剰または不足していないこと
  • 酸化やススの付着がないこと

外観品質の基準は、JIS Z 3261「ろう付け継手の外観試験方法」などの規格を参考に設定されます。

ろう回り・ぬれ性の基準

ろうが接合面全体に十分に浸透し、母材との濡れが良好であることが求められます。ぬれ性は、接触角やフロー距離で評価されることもあります。

強度基準

引張強度やせん断強度など、設計上必要な力に耐えられるかを確認します。一般的には、母材の80%以上の強度を基準とする場合が多いですが、用途によってはそれ以上の要求もあります。

気密・耐圧性の基準

配管や冷却機器などでは、漏れがないことが重要です。ヘリウムリークテストなどで漏洩量を定量的に測定し、基準値以下であるかを確認します。

合格判定の考え方

検査結果をもとに、製品が合格か不合格かを判定します。その際の考え方は以下の通りです。

外観検査による合否判定

  • ろうが十分に広がっており、未接合部がない → 合格
  • ピンホールやクラックが見られる → 不合格
  • ろうが過剰にはみ出して他部品と干渉する → 不合格
  • 軽微な変色や汚れのみ → 許容(ただし用途による)

軽微な欠陥であっても、重要部品では「再加熱修正」や「再ろう付け」が必要な場合があります。

非破壊検査による合否判定

  • X線や超音波検査で内部に欠陥なし → 合格
  • 欠陥の大きさや位置が許容範囲内 → 条件付き合格
  • 欠陥が接合界面に連続して存在 → 不合格

非破壊検査では、検出された欠陥を分類し、欠陥サイズや分布によって判定基準を明確にすることが重要です。

機能試験による合否判定

リーク試験や強度試験などで、規定値を満たすかを数値で確認します。例えば、

  • 耐圧試験:規定圧力を加えても漏れ・破損がない → 合格
  • 引張試験:破断荷重が規定値以上 → 合格

合格基準を数値化することで、検査員による判断のばらつきを抑えることができます。

ろう付け品質を安定させるためのポイント

検査で不良を見つけることも大切ですが、そもそも不良を発生させないための「予防的品質管理」が重要です。以下の点に注意すると、検査での不合格率を大幅に減らせます。

接合面の前処理を徹底する

母材の油脂や酸化膜が残っていると、ろうのぬれ性が低下します。脱脂・酸洗いなどの表面処理を確実に行うことが基本です。

ろう材・フラックスの選定を最適化

母材の種類や加熱方法に合ったろう材・フラックスを使用することで、均一なろう回りが得られやすくなります。

加熱条件の管理

温度が低すぎると未接合、高すぎると母材の損傷や酸化を引き起こします。温度管理は熱電対や赤外線温度計を用いて精密に行うことが望ましいです。

ろう付け後の洗浄と仕上げ

フラックス残渣や酸化物は、後の腐食や導電不良の原因になります。洗浄や研磨によって清浄な仕上がりを保ちましょう。

まとめ

ろう付けの検査は、製品の信頼性と安全性を保証するために欠かせない工程です。外観検査から非破壊検査、破壊試験に至るまで、用途に応じた適切な方法で品質を確認することが求められます。

また、検査基準を明確に数値化し、合格・不合格の判断基準を統一することで、工程の安定化と再現性の高いろう付け品質が実現します。最終的には、検査で不良を見つけるだけでなく、「不良を出さない設計・工程管理」を目指すことが、信頼性の高い製品づくりにつながります。

いかがでしたでしょうか?
金属加工.comでは、他にも金属加工関連の情報を発信しております。他にも気になる記事がありましたら、是非ご覧ください。

金属加工.comのトップページはこちら↓

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: 1-6-1024x116.png

関連記事はこちら↓

記事URLをコピーしました