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アルミのろう付け技術と課題

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アルミニウムは軽量で熱伝導性や耐食性に優れる金属として、航空機や自動車、電子機器、建築分野など、さまざまな産業で広く利用されています。しかし、アルミの接合は一見簡単そうに見えて実は非常に難しく、特に「ろう付け」では多くの技術的課題が存在します。本記事では、アルミのろう付け技術の基本から、実際の方法、注意点、そして現場で直面する課題とその解決策までを詳しく解説します。

アルミろう付けとは

アルミのろう付けとは、アルミニウムやアルミ合金同士、あるいはアルミと他の金属を接合するために、母材を溶かさず、ろう材だけを溶かして接合する方法です。一般的には、450℃〜600℃程度の温度で行われます。

アルミは溶接も可能ですが、溶融温度が低く(約660℃)、酸化皮膜が強固なため、アーク溶接では品質を安定させるのが難しいという特徴があります。そのため、より低温で酸化皮膜への影響が少ない「ろう付け」が有効な選択肢となります。

アルミろう付けに使用されるろう材

アルミのろう付けでは、母材に合わせたろう材の選定が重要です。代表的なろう材は以下の通りです。

アルミろう(Al-Si系)

最も一般的なのがAl-Si(アルミ-シリコン)系のろう材です。
例えば、「Al-12Si」(シリコンを12%含む)などが代表的で、融点は約577℃と比較的低く、アルミ母材に適しています。ろう付け時のぬれ性が良く、熱膨張の違いにも比較的強い特徴があります。

Zn系ろう材

亜鉛系(Zn-AlまたはZn-Si系)ろう材は、低温で作業できる点がメリットです。融点は約380〜450℃と低いため、母材への熱影響を最小限に抑えられます。ただし、亜鉛の蒸発や脆化が起こりやすく、機械的強度が下がる傾向があります。

Ag系ろう材(銀ろう)

銀を含むろう材はアルミとの親和性が低いため、通常はフラックス併用が前提です。主に異種金属(アルミと銅など)の接合に使用されます。

フラックスの重要性

アルミろう付けの最大の難関は、「酸化皮膜の除去」です。アルミは空気中で瞬時に酸化し、表面に非常に強固な**酸化アルミニウム(Al₂O₃)**の膜を形成します。この膜がろう材の濡れを妨げ、接合不良の原因になります。

そのため、アルミろう付けでは専用のフラックスが不可欠です。代表的なフラックスの成分は以下のようなものがあります。

  • 塩化カリウム(KCl)
  • 塩化リチウム(LiCl)
  • 塩化ナトリウム(NaCl)
  • フッ化物(KF、AlF₃など)

これらを複合した塩化物系またはフッ化物系のフラックスが用いられます。フラックスは酸化皮膜を化学的に溶解・除去し、同時に表面を保護する役割を果たします。

ただし、フラックス残渣は腐食の原因になるため、ろう付け後の洗浄が重要です。特に水溶性フラックスの場合は、温水や超音波洗浄によって残渣を完全に除去することが求められます。

アルミろう付けの主な方法

アルミのろう付けには、いくつかの方法があります。それぞれの特徴を以下にまとめます。

トーチろう付け

酸素・アセチレンやプロパンバーナーを使用して行う方法です。
比較的手軽で設備投資が少なく、小規模生産や修理作業に向いています。ただし、加熱ムラが起こりやすく、作業者の熟練度に大きく依存します。

炉中ろう付け

部品全体を炉内で加熱し、均一な温度環境でろう付けする方法です。
大量生産向けであり、熱交換器やアルミラジエーターなどの製造で多く採用されています。真空炉や窒素雰囲気炉を用いることで酸化を防ぎ、フラックスレスろう付けも可能です。

インダクション(高周波誘導)ろう付け

電磁誘導によって局所的に加熱する方法です。加熱制御がしやすく、酸化を最小限に抑えられますが、設備コストが高く、形状に制約があります。

レーザー・電子ビームろう付け

近年注目されている高精度な加熱法です。極めて狭い範囲を短時間で加熱できるため、変形が少なく、電子部品や精密機器への応用が進んでいます。

アルミろう付けで発生しやすい不良

アルミろう付けでは、他の金属に比べて不良が起こりやすい傾向があります。主な不良とその原因は以下の通りです。

ろうのぬれ不良

酸化膜が十分に除去されていない、またはフラックスの効果が不足していると、ろうが広がらず接合が不完全になります。

ボイド・ピンホール

加熱温度が高すぎたり、フラックスが過剰だったりすると、揮発成分がガス化して空洞が生じます。これが強度低下の原因となります。

母材の溶融

アルミは融点が低いため、加熱制御を誤ると母材まで溶けてしまうことがあります。とくにトーチろう付けでは注意が必要です。

フラックス残渣による腐食

洗浄が不十分な場合、塩化物系のフラックスが残り、長期的に腐食を進行させる恐れがあります。

異種金属とのろう付け

アルミと他の金属(銅やステンレスなど)を接合する場合、さらに難易度が上がります。
熱膨張係数の違いやぬれ性の問題から、割れや剥離が発生しやすくなるためです。

このような場合には、中間層(インサート材)を挟む方法が用いられます。
たとえば、アルミと銅を直接ろう付けするのではなく、Ni(ニッケル)メッキを施すことで、ぬれ性と接合性を改善できます。

また、超音波ろう付けなどの新技術も登場しています。超音波振動を加えることで酸化膜を機械的に破壊し、フラックスなしで接合を実現する試みも行われています。

アルミろう付けの現場課題

アルミろう付けは理論的にはシンプルですが、現場では多くの課題があります。

温度管理の難しさ

アルミは熱伝導が非常に良いため、加熱するとすぐに全体が温まり、局部的な温度制御が難しくなります。わずか数十℃の差で母材が溶ける危険もあります。

酸化対策

加熱中にも酸化膜が再形成されるため、フラックスのタイミングや雰囲気制御が重要です。特にトーチろう付けでは、作業中に酸化が進みやすい問題があります。

自動化の難易度

炉中ろう付け以外では、手作業が多く、品質のばらつきが出やすい点も課題です。AI画像認識や温度センサーを用いた自動ろう付けシステムの開発が進んでいます。

フラックスレス化の要求

環境負荷低減の観点から、塩化物系フラックスを使わない「フラックスレスろう付け」が求められています。しかし、そのためには真空雰囲気や不活性ガス環境が必要で、設備コストが高い点が課題です。

今後の展望

アルミろう付け技術は、軽量化・高効率化を目指す産業の発展とともに、さらに重要性を増しています。特に電動車(EV)では、バッテリー冷却系の熱交換器やアルミ筐体接合など、アルミのろう付けが不可欠です。

今後は以下の方向性が期待されています。

  • フラックスレス化技術の普及(真空・窒素雰囲気ろう付けの低コスト化)
  • 超音波・レーザー援用ろう付けによる高精度化
  • AI・IoTを活用したプロセス制御での品質安定化
  • 異種材料接合の拡大(アルミ×銅、アルミ×樹脂など)

まとめ

アルミのろう付けは、軽量化と強度を両立するための有効な接合技術です。しかし、酸化皮膜、熱制御、フラックス残渣など、他金属とは異なる難しさを持ちます。

正しいろう材とフラックスの選定、適切な加熱方法、そして環境対策を組み合わせることで、高品質なアルミ接合が実現します。これからの製造現場では、環境配慮と生産効率を両立した次世代のアルミろう付け技術が、ますます重要な鍵となるでしょう。

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