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銅管のろう付け方法と注意点

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エアコンや冷蔵機器、給湯器、配管工事など、さまざまな分野で使用される銅管。これらを確実に接合するために欠かせないのが「ろう付け」です。銅管のろう付けは、一見単純な作業のように見えても、実際には温度管理や前処理、ろう材の選定など、いくつもの重要なポイントがあります。この記事では、銅管のろう付け方法と注意点をわかりやすく解説します。

銅管ろう付けの基本とは

ろう付けの原理

ろう付けとは、母材(この場合は銅管)よりも融点の低い金属「ろう」を溶かし、毛細管現象によって接合部に流し込んで固める接合方法です。母材そのものを溶かさずに接合できるため、熱変形が少なく、気密性・耐久性に優れた接合が可能です。

ろう付けは大きく分けて「やに入りはんだ」などを使う**軟ろう付け(600℃未満)と、「銀ろう」や「銅ろう」を使う硬ろう付け(600℃以上)**に分類されます。銅管の場合は高圧の冷媒や温水が通るため、強度の高い硬ろう付けが一般的です。

銅管ろう付けに使う材料

銀ろう

銅管のろう付けで最も広く使われているのが銀ろう(銀基ろう)です。代表的な成分は「銀+銅+亜鉛+スズ」などで、融点はおよそ630〜780℃。銀を多く含むほど流動性が高く、仕上がりが美しくなります。

たとえば、

  • BCuP-2(リン銅ろう):リンを含み、銅同士のろう付けにフラックス不要。
  • BAg-7(銀ろう):銀が多く含まれ、広い用途で使用可能。

などがあります。

フラックス

フラックスは、ろう付け時に金属表面の酸化膜を除去し、ろうのぬれ性(流れやすさ)を高めるために使用します。
ただし、リンを含むろう材(例:BCuP系)を銅同士で使う場合にはフラックス不要です。一方、銅と真鍮・ステンレスなど異種金属を接合する場合は必ずフラックスが必要になります。

銅管ろう付けに必要な工具と機材

銅管のろう付けを行うには、以下のような工具・設備を準備します。

  • トーチ(酸素・アセチレンまたはLPGバーナー)
    硬ろう付けでは800℃前後まで加熱が必要なため、トーチの火力が重要です。
  • ろう材(銀ろう・リン銅ろうなど)
    用途と母材に合わせて選定します。
  • フラックス(必要に応じて)
  • ワイヤーブラシ・サンドペーパー
    表面の酸化膜や汚れを除去するために使用します。
  • 治具・固定具
    ろう付け中に銅管が動かないよう固定します。
  • 防炎シート・耐熱手袋・遮光メガネ
    安全対策として必ず使用します。

銅管のろう付け手順

ここでは、一般的な冷媒用銅管(銅-銅)の硬ろう付け手順を紹介します。

① 切断と面取り

まず、銅管をパイプカッターなどで必要な長さに切断します。切断面に「バリ(削りカス)」が残ると、冷媒流路を塞ぐ原因になるため、リーマーやヤスリで丁寧に取り除きましょう。
また、差し込み側は軽く面取りしておくと、組み立てやすく、ろうの流れも良くなります。

② 清掃・脱脂

接合する銅管の内外面をサンドペーパーやワイヤーブラシで磨き、酸化皮膜や汚れを取り除きます。
さらに、油汚れがある場合はアセトンやアルコールで脱脂しておくと、ろうのぬれ性が向上します。

③ 組み立て・位置合わせ

磨いた後はすぐに接合部を差し込み、位置を固定します。長時間放置すると再び酸化膜ができ、ろうの流れが悪くなります。
差し込み量の目安は外径の約1~1.5倍程度です。

④ 加熱

トーチを使って銅管全体を均一に加熱します。
このとき、接合部だけを一点集中で加熱しないことがポイントです。局部的に温度が上がりすぎると、銅が酸化したり、ろうがうまく流れなくなります。
加熱中は銅の色の変化を目安にします。
暗赤色(約600℃前後)になったら、ろう材を接触させてみましょう。

⑤ ろう材の投入

接合部の温度が適正になっていれば、ろう材が毛細管現象で自然に吸い込まれます。無理に押し込まず、ろうが全周にわたって均一に流れるようにします。
一箇所に過剰に盛ると、強度が下がるだけでなく、内部にバリができる原因にもなります。

⑥ 冷却と洗浄

ろう付けが終わったら、自然冷却させます。水をかけて急冷すると割れやすくなるため避けましょう。
完全に冷えたら、フラックスの残渣(白い粉状の物質)をお湯やブラシで洗い落とします。残留すると腐食を招く恐れがあります。

銅管ろう付けの温度管理ポイント

ろう付けの失敗原因の多くは「加熱不足」または「過加熱」にあります。
ろう材がしっかり流れるためには、母材が適切な温度まで加熱されていることが不可欠です。たとえば銀ろう(BAg-7)なら、おおむね**700〜750℃**が目安です。

炎の色も重要な指標になります。
トーチの炎は「内炎」と「外炎」に分かれますが、加熱に使うのは外炎の先端からやや外側です。内炎を当てすぎると酸化や焼けが発生します。

よくあるろう付け不良と対策

① ろうが流れない

原因は加熱不足や酸化皮膜の残りです。
表面をきれいに磨き、均一に加熱しましょう。

② ろうが玉状になってはじかれる

これは母材が汚れているか、温度が高すぎるサインです。フラックスの塗り直しや温度調整を行います。

③ ろうが片側にしか流れない

炎の当て方が偏っている可能性があります。接合部全体を回すように炎を動かして均等に加熱します。

④ 接合部に気泡・ス穴ができる

ろう材の供給が早すぎたり、加熱がムラな場合に起きます。ゆっくりと吸い込ませ、温度が安定してからろうを流します。

⑤ フラックス残りによる腐食

フラックスを洗浄せず放置すると、長期間のうちに腐食が進行します。冷却後は必ず水洗いして除去します。

銅管ろう付けにおける安全上の注意

ろう付け作業では高温の炎と金属を扱うため、安全管理が欠かせません。

  • 周囲に可燃物がないか確認する
  • 防炎シートを敷く
  • 耐熱手袋・遮光メガネを着用する
  • 換気を十分に行う
  • 加熱直後の銅管は絶対に素手で触らない

また、屋内配管作業の場合、火気使用に伴う火災リスクがあるため、消火器や濡れタオルの準備も忘れずに行いましょう。

品質を高めるためのポイント

  • 接合面は常に清潔・乾燥・酸化膜なしの状態を保つ
  • ろう材は少量を均一に使用する
  • ろうが全周にわたって流れているか、外観で必ず確認する
  • ろう付け後はリークテスト(気密試験)を実施する

これらを守ることで、見た目にもきれいで強度・気密性の高い接合部を実現できます。

まとめ

銅管のろう付けは、見た目以上に繊細な作業です。加熱温度、フラックスの扱い、表面処理、冷却方法など、どの工程も仕上がりの品質に直結します。
ポイントを押さえて正しく作業すれば、長期間にわたって漏れのない確実な接合が可能です。

もし初めて挑戦する場合は、実際にスクラップ材などで練習し、ろうの流れ方や温度感覚を体で覚えるのがおすすめです。経験を積むことで、美しく信頼性の高いろう付け技術を身につけることができるでしょう。

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