切削加工における冷却方式の違い(ドライ・ミスト・フラッド)

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切削加工では、工具と被削材の接触により高温が発生します。温度上昇は工具摩耗や加工精度の低下を引き起こすため、冷却や潤滑の手法が重要になります。現在、代表的な冷却方式として「ドライ」「ミスト」「フラッド」の3種類が用いられています。本記事では、それぞれの特徴やメリット・デメリットをわかりやすく解説します。
切削加工における冷却の役割
冷却の主な目的は、発生する熱を抑えることと、工具や加工面の寿命を延ばすことにあります。切削中に発生する熱は、主に以下の3つの部分に分散します。
- 切りくず
- 工具
- 被削材
熱が工具に集中すると摩耗や欠けが進行しやすくなり、被削材に熱が残ると変形や精度不良の原因になります。冷却方式を選ぶことは、単なる温度管理にとどまらず、加工品質やコストに直結する大切な要素です。
ドライ加工とは
ドライ加工は、切削油やクーラントを一切使用せずに行う方式です。近年では環境対応やコスト削減の観点から注目されています。
ドライ加工のメリット
- 切削油や廃液処理のコストを削減できる
- 加工環境がクリーンで作業者の健康リスクが少ない
- 機械の洗浄やメンテナンスが容易
ドライ加工のデメリット
- 冷却効果がないため工具温度が上昇しやすい
- 高硬度材や難削材では工具寿命が短くなりやすい
- 高速加工や重切削には不向き
ドライ加工は、アルミや鋳鉄など比較的加工しやすい材料に適しています。また、工具コーティング技術の進化によって、摩擦や摩耗を抑えながらドライ加工でも高精度な仕上げが可能になりつつあります。
ミスト加工とは
ミスト加工は、圧縮空気で微細な油滴(ミスト)を噴霧して冷却・潤滑を行う方式です。一般的には「MQL(Minimum Quantity Lubrication:最小量潤滑)」とも呼ばれます。
ミスト加工のメリット
- 使用する油量がごく少なく、環境負荷や廃液処理が大幅に減少する
- 工具と被削材の接触部に潤滑油が届きやすく、摩耗を抑制できる
- フラッド方式に比べて飛散が少なく、作業環境を清潔に保てる
ミスト加工のデメリット
- 冷却効果はフラッドに比べて弱いため、熱がこもる可能性がある
- 導入には専用のミスト発生装置が必要
- 加工条件によっては油膜が不十分で工具摩耗が進むこともある
ミスト加工は、アルミ、銅、樹脂など熱伝導率が高い材料や、中〜高速の切削に適しています。また、自動車部品や精密部品の加工に広く導入されており、環境負荷低減の手法として注目されています。
フラッド加工とは
フラッド加工は、切削油を大量に工具と被削材に注ぎ込む方式です。従来から最も一般的に用いられてきました。
フラッド加工のメリット
- 冷却効果が高く、工具温度の上昇を効果的に抑制できる
- 切りくずを洗い流し、加工部の視認性や加工安定性を向上させる
- 工具寿命を延ばし、高速・重切削に適応できる
フラッド加工のデメリット
- 大量の切削油が必要で、ランニングコストや廃液処理費用がかかる
- 油の飛散により作業環境が悪化しやすい
- 環境規制や作業者の健康面で課題がある
フラッド方式は特に、難削材(チタン合金、ステンレス鋼など)や連続切削に向いており、工具寿命や加工精度を重視する場合に選ばれることが多いです。
冷却方式の選び方
ドライ・ミスト・フラッドのいずれを採用するかは、加工条件や求める品質によって異なります。選定のポイントを整理すると以下のようになります。
- 環境重視・低コスト重視 → ドライ加工
- 環境配慮と工具寿命のバランス → ミスト加工
- 高精度・難削材・高速切削 → フラッド加工
また、近年ではハイブリッド的な活用も増えています。例えば通常はミストを使用し、難削部だけフラッドを併用するなど、柔軟な運用でコストと品質を両立させるケースもあります。
まとめ
切削加工における冷却方式は、ドライ・ミスト・フラッドの3種類があり、それぞれに特徴と適した用途があります。
- ドライは環境負荷が小さく、メンテナンスが容易
- ミストは最小限の油で潤滑を行い、環境と品質の両立を図れる
- フラッドは冷却性能が高く、難削材や高速加工に有効
加工条件や目指す品質、コストバランスを考慮して、最適な冷却方式を選択することが重要です。今後は環境規制の強化やサステナブルな生産体制の普及に伴い、ミストやドライ方式の活用が一層広がると考えられます。
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