切削加工関連

銅の切削加工で発生しやすい問題と対策

mw2pp0jd6c

金属加工.comをご覧いただき、誠にありがとうございます。
本サイトは、山梨県・長野県にて切削加工やろう付けを行っている 北東技研工業株式会社 が運営しております。
金属加工に関するお困りごとがございましたら、ぜひお気軽に当社までご相談ください。

銅は電気伝導率や熱伝導率が非常に高く、また耐食性にも優れた素材であるため、電気部品や熱交換器、配管部品など幅広い分野で使用されています。しかし、機械加工、特に切削加工においては扱いが難しい素材のひとつです。鉄鋼やアルミニウムと比べて独特の性質を持つため、加工不良が発生しやすく、適切な工具や条件を選ばなければ品質や生産効率を大きく損なう可能性があります。
本記事では、銅の切削加工でよく見られる問題点と、その解決に向けた具体的な対策を解説します。

銅の切削加工の特徴

銅は延性と展性に富み、非常に柔らかい金属です。そのため、塑性変形しやすく、切削時には刃先にまとわりつくように切りくずが生成されやすいという特徴があります。また、硬さが低いため工具摩耗は少ない一方で、熱伝導率が高いことで切削熱がすぐに拡散し、刃先温度が上がりにくいという利点もあります。
一見すると加工しやすい材料に思えますが、実際には「切りくず処理の難しさ」「加工面の仕上げ不良」「寸法精度の不安定さ」などの課題が頻発します。

よくある問題点と原因

切りくずが絡みやすい

銅は延性が高いため、切削時に生成される切りくずが長く伸びてしまい、工具やワークに絡みつきやすい傾向があります。特に旋盤加工や穴あけ加工では、切りくずが排出されずに溜まってしまい、表面傷や工具破損の原因となります。

バリの発生

銅は柔らかいため、切削の終わり際や穴あけ加工の出口側に大きなバリが生じやすいという特徴があります。バリは製品の品質低下や組立時の不具合、さらには短絡や漏電のリスクにもつながります。

加工面の粗さ不良

切削後の加工面に「引っかき傷」や「ささくれ」が出やすいことも銅特有の課題です。これは工具の逃げ面での摩擦や切りくずの噛み込みによって発生するケースが多く、仕上げ面の光沢感を損ないます。

寸法精度の不安定さ

銅は加工硬化しやすいため、切削の進行に伴ってワークの局所的な硬さが変化します。その結果、工具の切り込み量が不安定になり、寸法精度のバラつきが生じやすくなります。特に高精度部品では問題となります。

工具寿命の短縮

銅は工具に化学的な親和性が強いため、刃先に溶着が発生することがあります。これにより工具の摩耗や欠けが進みやすく、結果として工具寿命が短くなります。

問題への具体的な対策

切りくず処理の工夫

切りくずの絡みを防ぐためには、工具形状や切削条件を工夫することが重要です。

  • ブレーカ付き工具の使用:切りくずを細かく分断できるインサートやドリルを採用することで、絡みを抑制できます。
  • 切削条件の最適化:送り速度を高め、切りくずが短く折れるようにする。
  • クーラントの活用:切りくずの流れを助けるとともに、加工面の冷却と潤滑を行います。

バリ対策

バリを低減するためには、工具の選択や加工順序を工夫することが効果的です。

  • 高精度刃先の工具使用:シャープな切れ味を持つ工具を使うことで、材料を引きちぎらずに切断できます。
  • 加工順序の工夫:最後に仕上げ加工を行い、入口や出口部分を整える。
  • 二次処理の導入:バレル研磨やブラシ仕上げを組み合わせて、バリ除去工程を確立する。

加工面仕上げ改善

表面粗さを改善するためのポイントは以下の通りです。

  • 刃先の管理:刃先が摩耗していると表面傷が増えるため、こまめに交換する。
  • 工具コーティング:DLCやTiB2などのコーティング工具は、銅との溶着を防ぎ、仕上げ面を向上させます。
  • 低切込み・高送りの組み合わせ:過度な切り込みを避け、安定した切削を行うことで面粗さを改善できます。

寸法精度確保

寸法精度を安定させるためには、熱変形や加工硬化の影響を抑えることが重要です。

  • 切削条件の安定化:切削速度や送りを一定に保つ。
  • 荒加工と仕上げ加工の分離:一度に仕上げ寸法まで加工せず、荒取り後に仕上げを行う。
  • 工具剛性の確保:剛性の高いホルダーを選び、振動を抑制する。

工具寿命延長

銅加工における工具摩耗や溶着を防ぐためには、以下の工夫が有効です。

  • 適切な工具材質の選択:超硬工具やダイヤモンド工具が有効。特に高精度仕上げにはPCD工具が好適です。
  • コーティング工具の利用:銅との親和性が低いコーティングを施した工具を使用することで、溶着を防止。
  • クーラント供給:切削油を適切に供給することで潤滑効果を高め、刃先の摩耗を抑制します。

銅合金による加工性の違い

純銅は非常に延性が高く、最も加工が難しいとされます。一方で、黄銅(真鍮)や青銅といった銅合金は被削性が改善されており、切りくず処理や寸法安定性に優れます。そのため、加工対象が純銅なのか、銅合金なのかを見極め、工具や条件を最適化することが重要です。

現場での実践ポイント

  • 加工前に工具の状態を必ず確認する
  • 切りくず処理を見越して機械停止を防ぐ工夫をする
  • バリの発生部位を予測し、加工順序を工夫する
  • 加工後は寸法測定をこまめに行い、変化を早期に把握する
  • 加工条件をデータ化し、再現性を高める

まとめ

銅の切削加工は「やわらかい素材なのに加工が難しい」という一見矛盾した特徴を持ちます。問題の多くは切りくず処理、バリ、仕上げ面、寸法精度、工具寿命に集約されますが、適切な工具選定や条件設定、加工順序の工夫によって十分に対策可能です。
現場での経験とデータの積み重ねが、銅加工の品質と効率を高める鍵となるでしょう。

いかがでしたでしょうか?
金属加工.comでは、他にも金属加工関連の情報を発信しております。他にも気になる記事がありましたら、是非ご覧ください。

金属加工.comのトップページはこちら↓

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: 1-6-1024x116.png

関連記事はこちら↓

記事URLをコピーしました