鉄鋼材料のJIS規格を体系的に解説
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鉄鋼材料は、建築、機械、車両、造船など、あらゆる産業の基盤を支える重要な素材です。その品質や性能を一定に保ち、安全で信頼できる製品を供給するために欠かせないのが「JIS規格(日本産業規格)」です。本記事では、鉄鋼材料に関するJIS規格の体系をわかりやすく解説し、主要な分類や記号の読み方、用途別の代表例を紹介します。
JIS規格とは何か
JIS規格の概要
JIS(Japanese Industrial Standards、日本産業規格)は、日本国内で製造・流通する製品や材料、試験方法、寸法、記号などを統一するために定められた国家規格です。制定・改正は主に「日本産業標準調査会(JISC)」が行い、法律上は「産業標準化法」に基づいています。
JIS規格の目的は、品質の安定化、生産効率の向上、取引の合理化、安全確保、環境負荷低減などです。特に鉄鋼分野では、材料の化学成分、機械的性質、熱処理条件、試験方法などが細かく定められており、国内メーカー同士はもちろん、海外との技術的な整合性にも大きく寄与しています。
鉄鋼材料におけるJISの重要性
鉄鋼は、同じ「鉄」といっても炭素量や合金元素の配合によって性質が大きく変化します。したがって、製品ごとに必要な強度、靱性、耐食性などを満たすため、厳密な材料規格が不可欠です。JISでは、これらを体系的に分類し、誰が見ても同じ品質水準を理解できるように定めています。
鉄鋼材料のJIS規格の体系
鉄鋼系JIS規格の分類
鉄鋼材料に関するJIS規格は、主に以下のような分野に分かれています。
- 一般構造用鋼材(SS鋼など)
 - 機械構造用炭素鋼・合金鋼(S-C、S-Cr、S-Niなど)
 - 炭素工具鋼・合金工具鋼(SK鋼、SKH鋼など)
 - ばね鋼(SUP鋼)
 - ステンレス鋼(SUS鋼)
 - 鋳鉄・ダクタイル鋳鉄(FC、FCD)
 - 鋼板・鋼管などの形状別規格(SP、STPGなど)
 - 溶接材料(JIS Z 3211など)
 
このように、JISでは「用途」や「製造形態」、「化学成分」によって体系的に区分されています。
記号(鋼種記号)の読み方
JIS規格では、鋼材にアルファベットと数字を組み合わせた「鋼種記号」が付けられています。これにより、材料の種類や特性を瞬時に判断できるようになっています。
一般構造用圧延鋼材(SS)
「SS」は“Steel Structure”の略で、一般構造物向けの鋼材を意味します。
たとえば「SS400」は、引張強さが400N/mm²程度の一般構造用圧延鋼材です。
- SS400:建築・機械構造に広く使用される汎用鋼材
 - SS490:より高強度を必要とする構造物向け
 - SS540:溶接構造用の高強度鋼
 
機械構造用炭素鋼(S-C)
「S」はSteel、「C」はCarbonの略です。数字は炭素含有量の目安を示します。
例:
- S10C → 約0.10%の炭素を含む低炭素鋼(加工性良好)
 - S45C → 約0.45%の炭素を含む中炭素鋼(機械部品に多用)
 - S55C → 高炭素で強度が高い(軸・ギアに使用)
 
機械構造用合金鋼
「SCr」、「SNCM」などのように、合金元素を略号で示します。
代表例:
- SCM435(Cr-Mo鋼):自動車部品やボルトなど高強度部材向け
 - SNCM439(Ni-Cr-Mo鋼):高靱性を要するギアや軸向け
 
ステンレス鋼(SUS)
「SUS」は“Steel Use Stainless”の略です。主に耐食性や耐熱性が要求される環境で使用されます。
代表例:
- SUS304:最も汎用的なオーステナイト系ステンレス
 - SUS316:モリブデン添加で耐食性が高い
 - SUS430:フェライト系で磁性を持つ、安価なステンレス
 
工具鋼(SK・SKH)
「SK」はCarbon Tool Steel、「SKH」はHigh-speed Tool Steelの略です。
例:
- SK3:炭素工具鋼(鋸や刃物用)
 - SKH51:高速度工具鋼(ドリル・タップなどに使用)
 
鋼材形状別のJIS規格
鉄鋼材料は、形状によってもJISが細分化されています。たとえば「板」「棒」「管」「線材」など、加工用途によって規格が異なります。
鋼板類
代表的な規格には以下があります。
- SPCC:冷間圧延鋼板(Commercial Cold Rolled Steel)
 - SPHC:熱間圧延鋼板(Hot Rolled Steel)
 - SECC:電気亜鉛めっき鋼板
 - SGCC:溶融亜鉛めっき鋼板
 
これらは自動車、家電、建築など、幅広い用途で使用されます。
鋼管類
管状の鋼材もJISで細かく分類されています。
- STPG:配管用炭素鋼管(Pressure用途)
 - STKM:機械構造用炭素鋼管(Mechanical用途)
 - STS:ステンレス鋼管
 
用途により、溶接管・シームレス管などの製造法も規定されています。
鋳鉄・鋳鋼
鋳造品にもJISが定められています。
- FC200:ねずみ鋳鉄(一般機械部品向け)
 - FCD450:ダクタイル鋳鉄(高靱性を要する構造部品向け)
 
鉄鋼材料のJIS番号体系
JIS番号は、「分野記号+規格番号」の形式で表されます。
たとえば「JIS G 4051 S45C」の場合、
- JIS:日本産業規格
 - G:鉄鋼分野(Iron & Steel)
 - 4051:機械構造用炭素鋼鋼材に関する規格番号
 - S45C:鋼種記号
 
このように、分野を示すアルファベット(A~Z)が各業界に割り当てられています。
| 分野記号 | 意味 | 例 | 
|---|---|---|
| G | 鉄鋼 | JIS G 3101(SS鋼) | 
| H | 非鉄金属 | JIS H 4000(アルミ) | 
| Z | 溶接・試験法など | JIS Z 2241(引張試験法) | 
JIS規格と国際規格(ISO・ASTM)との関係
鉄鋼材料の取引や輸出入が増える中で、JISと海外規格との整合性も重要になっています。
- ISO(国際標準化機構):国際的な共通規格。多くのJISがISOに整合化されている。
 - ASTM(米国試験材料協会):主にアメリカ基準。AISI規格などとも関連が深い。
 
例えば、JIS G 4051 S45C ≒ AISI 1045(ほぼ同等材)という対応関係があります。近年はグローバルサプライチェーンに対応するため、JISとISOの統合化が進んでおり、同等性を明示するケースも増えています。
JIS規格の確認方法
JIS規格は、**日本産業標準調査会(JISC)や日本規格協会(JSA)**の公式サイトから検索・閲覧できます。最新版を確認することで、改訂内容や試験方法の更新なども把握可能です。
また、鉄鋼メーカー各社のカタログやデータシートにも、対応JIS番号や相当外国規格(ISO・ASTM・DINなど)が併記されているため、実務上の選定にも役立ちます。
用途別の代表的JIS鋼材例
| 用途 | 主なJIS鋼種 | 特徴 | 
|---|---|---|
| 建築構造物 | SS400, SM490 | 溶接性と強度のバランス | 
| 自動車部品 | SCM435, S45C | 高強度・機械加工性 | 
| ステンレス製品 | SUS304, SUS316 | 耐食性・美観 | 
| 工具・金型 | SKH51, SKD11 | 高硬度・耐摩耗性 | 
| 配管・圧力容器 | STPG370, STS304 | 耐圧性・耐食性 | 
このように、JIS規格を理解すれば、用途に応じた最適な材料選定が容易になります。
まとめ
鉄鋼材料のJIS規格は、材料の化学成分や機械的性質、製造形態などを体系的に整理した、日本の産業の基礎を支える重要な規格です。
- JIS記号は「用途」や「性質」を表す体系的な略号で構成されている
 - 板・棒・管・鋳物など、形状ごとに規格が分かれている
 - ISOやASTMなど国際規格との整合も進んでいる
 
JISを理解することで、鉄鋼材料の選定や品質管理、図面の読み取りが格段に正確になります。ものづくりに携わる技術者や設計者にとって、JIS規格は“材料の共通言語”といえる存在です。
いかがでしたでしょうか?
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