鉄とは?その性質・種類・用途をわかりやすく解説

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私たちの身の回りには、鉄でできたものが数え切れないほど存在します。建物の骨組み、自動車、電化製品、そして身近な調理器具まで、あらゆる場所で「鉄」は欠かせない素材です。
しかし、「鉄ってどんな金属?」と聞かれると、意外と答えに困る人も多いのではないでしょうか。
この記事では、鉄の基本的な性質から、種類、用途までをわかりやすく解説します。

鉄の基本的な性質

鉄は、元素記号「Fe」、原子番号26の金属元素です。地球上に非常に多く存在し、工業的にも最も多く利用されている金属の一つです。

鉄の特徴

鉄の最大の特徴は「強さ」と「加工のしやすさ」のバランスが取れていることです。
純粋な鉄(純鉄)は柔らかく延性に富みますが、炭素などを少量加えることで強度が大きく上がります。これが「鋼(はがね)」と呼ばれる材料です。

また、鉄は磁性を持つ金属としても知られています。磁石にくっつく性質(強磁性)は、鉄、ニッケル、コバルトなど限られた金属だけが持っています。
そのため、鉄はモーターや発電機などの電磁機器でも非常に重要な役割を担っています。

鉄の欠点

一方で、鉄には「さびやすい」という弱点があります。
鉄は空気中の酸素や水分と反応して酸化し、赤茶色の「酸化鉄(さび)」を生じます。
このため、実際の製品にはメッキ、塗装、またはステンレス化などの防錆処理が施されるのが一般的です。

鉄の種類

鉄は、含まれる炭素量や添加元素の違いによって、さまざまな種類に分けられます。
大きく分けると「純鉄」「鋳鉄」「鋼(はがね)」の3つです。

純鉄

純鉄とは、炭素などの不純物をほとんど含まない鉄のことです。
柔らかく、延性や靭性に優れていますが、強度が低いため構造材にはあまり使われません。
主に磁気特性を活かして、電磁機器や分析用の標準試料などに利用されます。

鋳鉄(ちゅうてつ)

鋳鉄は、炭素を2〜4%程度含む鉄合金です。
炭素を多く含むことで硬くて脆い性質を持ち、曲げや衝撃には弱い一方、圧縮強度や耐摩耗性に優れています。
また、溶かして型に流し込む「鋳造」がしやすいため、エンジンブロック、マンホール、ストーブなどの複雑な形状の部品に広く用いられます。

鋳鉄にはいくつかの種類があり、代表的なものに「ねずみ鋳鉄(グレーキャストアイアン)」と「球状黒鉛鋳鉄(ダクタイルアイアン)」があります。
ねずみ鋳鉄は、黒鉛が片状に分散しており、振動吸収性に優れます。
一方、ダクタイル鋳鉄は黒鉛が球状で、ねずみ鋳鉄よりも強度と靭性に優れています。

鋼(はがね)

鋼は、炭素を0.02〜2.0%程度含む鉄合金のことです。
この炭素量の範囲が、鉄の中で最もバランスが取れた機械的性質を生み出します。
鋼は、熱処理によって強度や硬さ、靭性を自在にコントロールできるため、構造材から工具まで幅広く利用されています。

鋼の種類と特徴

鋼には、用途や成分によってさらに細かい分類があります。ここでは代表的な種類を紹介します。

炭素鋼

炭素のみを主な添加元素とする最も基本的な鋼です。
炭素含有量が多いほど硬くなりますが、同時に脆くもなります。
含有量によって次のように分類されます。

合金鋼

炭素以外にもクロム、ニッケル、モリブデン、マンガンなどを加えた鋼を合金鋼といいます。
これらの元素を添加することで、耐食性、耐熱性、強度などを向上させることができます。

たとえば、ニッケルを加えると靭性が向上し、クロムを加えると耐食性が高まります。
自動車のギアやシャフト、建設機械など、高い性能が求められる部品に使われます。

ステンレス鋼

ステンレス鋼は、鉄にクロムを10.5%以上含ませた合金です。
クロムが表面に「不動態被膜」と呼ばれる薄い酸化膜を形成し、酸化(さび)を防ぎます。
耐食性と強度を両立しており、キッチン用品、医療機器、建築外装など、日常生活のあらゆる分野で活躍しています。

ステンレスには大きく分けて3つの系統があります。

  • フェライト系:磁性があり、成形しやすい(例:SUS430など)
  • オーステナイト系:非磁性で耐食性が高い(例:SUS304など)
  • マルテンサイト系:焼入れにより硬化し、刃物などに使われる(例:SUS420など)

鉄の用途

鉄はその優れた機械的特性とコストの安さから、ほぼすべての産業で利用されています。代表的な用途を見ていきましょう。

建築・土木分野

ビルや橋、トンネルなど、構造物の多くに鉄鋼材が使われています。
特に「鉄筋コンクリート」や「鉄骨構造」は、鉄の強度を活かした代表例です。
鉄筋は引っ張り強さに優れ、コンクリートの圧縮強さと組み合わせることで、非常に高い耐久性を発揮します。

また、建築現場では、H形鋼やI形鋼などの形鋼が多用され、構造の安定化と施工効率を両立しています。

自動車・機械分野

自動車の車体やエンジン部品、軸受、ギアなど、鉄は機械分野でも欠かせません。
高い強度と加工性を持つため、コストを抑えながら大量生産が可能です。
また、鉄鋼メーカーは軽量化のために「ハイテン材(高張力鋼板)」の開発を進めており、安全性と燃費性能を両立する技術が進化しています。

家電・日用品

冷蔵庫や洗濯機の外装、調理器具などにも鉄が使われています。
特にステンレス鋼は、見た目の美しさと耐食性の高さから、家庭用品に多く採用されています。
また、鉄鍋などは熱伝導と保温性に優れており、料理人にも愛用されています。

エネルギー・インフラ

発電所のタービン、パイプライン、風力発電の支柱など、エネルギー関連設備にも鉄が活躍しています。
また、鉄道レールや船舶などの交通インフラにも欠かせません。
「重くて強い」という鉄の特徴が、社会の基盤を支えているのです。

鉄の再利用と環境への配慮

鉄はリサイクル性の高い金属でもあります。
スクラップとなった鉄は再び溶かして新しい製品に生まれ変わります。
実際、世界の鉄鋼生産の約3割はリサイクル材から作られており、環境負荷の低減に大きく貢献しています。

近年では、製鉄時に発生する二酸化炭素(CO₂)排出を減らすため、「水素還元製鉄」や「電炉化」が注目されています。
これにより、脱炭素社会の実現に向けた動きが加速しています。

まとめ

鉄は、地球上で最も多く利用される金属であり、その用途は実に多岐にわたります。
炭素量や添加元素を調整することで、柔らかくも硬くも、さびにくくもできる——それが鉄の最大の魅力です。
私たちの生活のあらゆる場面に鉄が関わっており、まさに「産業の血液」と呼ぶにふさわしい素材といえるでしょう。

今後は、環境への配慮を重視した鉄鋼技術の発展が進み、より持続可能な社会の構築に貢献していくことが期待されます。

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