切削加工関連

薄肉部品の切削で注意すべき点

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薄肉部品は、軽量化や精密化の需要が高まる中で、自動車、航空機、医療機器、精密機械など幅広い分野で使用されています。しかし、切削加工においては変形や振動、熱による影響が顕著に現れるため、通常の加工とは異なる多くの注意点があります。本記事では、薄肉部品を切削加工する際に考慮すべき課題と、その解決策について詳しく解説します。

薄肉部品の定義と特徴

薄肉部品とは、文字通り肉厚が薄い形状の部品を指します。明確な基準はありませんが、一般的には厚みに対して径や幅が大きいものや、肉厚が数ミリ以下のプレート状・筒状の部品が該当します。特徴として以下が挙げられます。

  • 剛性が低い:切削抵抗やクランプ力によって容易に変形する。
  • 振動しやすい:工具接触時に共振が発生しやすい。
  • 熱影響を受けやすい:熱膨張や残留応力によって寸法が安定しにくい。
  • 表面精度が要求される場合が多い:軽量化と同時に機能部品として高精度が必要なことが多い。

これらの性質から、切削条件や治具の設計を工夫しなければ、仕上がり精度を確保することが難しくなります。

主な問題点

薄肉部品の切削では、次のような問題が発生しやすくなります。

変形

切削抵抗やクランプ力により部品がたわみ、加工中に本来の寸法から外れてしまうことがあります。特に長手方向や広い面積を持つ薄板では顕著です。

バリや面の荒れ

部品がたわんだ状態で加工されると、切削後に反発が起こり、表面にムラやバリが残ることがあります。

寸法精度不良

加工中は寸法が出ていても、取り外した後に応力解放や熱収縮によって寸法が変化するケースがあります。

工具摩耗の促進

薄肉部品では切削中に断続的な接触や振動が発生しやすいため、工具の刃先摩耗や欠けが進行しやすくなります。

加工前の準備で注意すべき点

薄肉部品の切削では、加工を始める前の準備が非常に重要です。

素材の選定と前処理

残留応力の大きい素材をそのまま加工すると、削った後に反りが出やすくなります。焼鈍や応力除去処理を施すことで、加工後の変形を減らせます。

クランプ方法

通常のバイスやチャックでは変形を招くため、真空チャック、治具プレート、ゴムシートを使った押さえなど、応力を分散させる固定方法が有効です。

加工順序の計画

一度に大きく削るのではなく、粗加工で応力を逃がし、その後に仕上げ加工を行う二段階加工が有効です。また、対称的に削ることで変形のバランスを取ることも重要です。

切削条件の工夫

薄肉部品の切削では、工具や切削条件を慎重に選ぶ必要があります。

切削速度と送り

切削速度を過度に上げると熱影響が強くなり、変形の原因となります。一方で送りを低くしすぎると工具が擦るだけになり、摩耗や面粗さの悪化を招きます。適度な送りと低めの切削速度のバランスが求められます。

切り込み量

一度に深く切り込むと部品が変形するため、浅切り込みで複数回に分けて加工するのが有効です。

工具の選定

  • 高剛性工具:ショートシャンク工具を選ぶことで振動を抑えられます。
  • コーティング工具:摩耗を防ぎ、発熱を抑える効果があります。
  • 特殊刃形工具:仕上げ用の鏡面刃や高送り用工具を使うと、変形を抑えつつ加工効率を上げられます。

クーラントの利用

冷却性能を重視し、ミストや高圧クーラントを用いることで発熱を抑制し、寸法安定性を確保できます。

振動対策

薄肉部品は共振しやすいため、振動対策も必須です。

  • 工具突き出しを最小限にする。
  • 高剛性の治具やバックアッププレートを使用する。
  • 加工経路を工夫し、断続切削を避ける。
  • 加工条件を調整し、工具と部品の固有振動数を避ける。

これらを組み合わせることで、ビビり音や仕上げ面の荒れを防ぐことが可能です。

仕上げ加工での注意

仕上げ工程では特に寸法精度と表面品質が求められます。

  • 最終仕上げは小切込み・低送りで行う。
  • エアブローで切りくずを除去し、切削抵抗を一定に保つ。
  • 仕上げ専用の工具を用意し、粗加工と兼用しない。
  • 熱影響を避けるためのインターバル加工を行う。

また、仕上げ後には寸法測定だけでなく、反りや歪みの有無を確認することが欠かせません。

加工後の処理と検査

薄肉部品は加工が終わった後にも注意が必要です。

  • 応力解放焼鈍を行い、残留応力を減らす。
  • 三次元測定機で全体の寸法・形状を確認する。
  • 表面のバリや歪みを丁寧に取り除く。

こうした後処理によって、製品の信頼性と安定性が向上します。

まとめ

薄肉部品の切削は、一般的な部品加工に比べて難易度が高く、多くの要素を考慮しなければなりません。変形や振動、熱による影響をいかに抑えるかが成功の鍵です。

  • クランプ方法と治具設計の工夫
  • 切削条件の最適化
  • 加工順序の戦略的な立案
  • 振動と熱対策の徹底
  • 加工後の検査と処理

これらを総合的に実施することで、薄肉部品でも高精度かつ安定した加工が可能になります。現場ごとに条件は異なるため、試作や検証を通じて最適解を導き出すことが重要です。

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