真鍮にめっきを施す理由とは?見た目・防錆・導電性の観点から解説

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真鍮とはどんな金属か

真鍮(しんちゅう)は、銅と亜鉛を主成分とする合金です。英語では「brass(ブラス)」と呼ばれ、古くから装飾品や機械部品、電気部品など幅広い用途に使われてきました。
銅の美しい赤みと、亜鉛の黄色が混ざることで、黄金色に近い輝きを持つのが特徴です。また、加工性や伸び性に優れ、切削やプレス加工などがしやすいため、装飾金具やバルブ、ネジ、端子など、多様な分野で利用されています。

しかし、真鍮は見た目が美しくても、そのままでは長期間の使用に耐えられない場合があります。空気中で酸化して変色したり、湿気や化学物質により腐食が進行したりするため、実用的な観点から「めっき」が施されることが多いのです。

真鍮にめっきを施す主な目的

真鍮へのめっきには、以下のような目的があります。

  • 外観をより美しく仕上げる(装飾性の向上)
  • 腐食や変色を防ぐ(防錆性の向上)
  • 電気的な性能を高める(導電性・はんだ付け性の向上)
  • 耐摩耗性を強化する(機械的保護)

つまり、めっきは単なる装飾ではなく、真鍮の性能をトータルに高めるための表面処理技術といえます。以下では、それぞれの観点から詳しく解説していきます。

見た目を美しくする目的(装飾性の向上)

真鍮は新品の状態では黄金色の美しい輝きを持っていますが、時間の経過とともに酸化して「くすみ」や「黒ずみ」が発生します。これを防ぎ、長期間にわたり美観を維持するためにめっきが施されます。

ニッケルめっきやクロムめっきで光沢を維持

装飾目的でもっともよく用いられるのが、ニッケルめっきやクロムめっきです。
ニッケルめっきは光沢と平滑性に優れており、さらにその上に薄くクロムめっきを重ねることで、銀白色の強い輝きと耐食性が得られます。これにより、真鍮本来の黄金色とは異なる「高級感のある金属光沢」を実現できるのです。

例えば、水栓金具やドアノブ、楽器のキー部分などでは、真鍮の上にニッケル-クロムめっきを施すことで、見た目と耐久性を両立しています。

金めっきで高級感を演出

また、真鍮に金めっきを施すケースも多く見られます。真鍮はもともと金色に近い色味を持ちますが、実際の金めっきによってより深みのある輝きと耐変色性が得られます。
アクセサリーや高級家具の装飾金具、計器の装飾パネルなど、デザイン性を重視する分野では金めっきが選ばれることが一般的です。

防錆・防食のためのめっき

真鍮は鉄のように「錆びて赤くなる」ことはありませんが、空気中の硫黄成分や湿気に反応して、表面が黒ずんだり、緑青(りょくしょう)が発生したりします。これを防ぐために、防食性の高いめっきが施されます。

ニッケルめっきによる保護層

真鍮の上にニッケルめっきを施すことで、外気や湿気から金属表面を隔離し、腐食反応を抑えることができます。ニッケルは比較的硬く、耐食性にも優れているため、防錆目的で非常に有効です。
真鍮製の電気部品や装飾品などでは、まずニッケルめっきを下地として行い、その上に装飾めっき(クロム・金・銀など)を重ねる構造が多く採用されています。

錫めっき・銀めっきによる腐食抑制

電気部品や食品機器などでは、ニッケル以外にも錫(スズ)や銀のめっきが使われることがあります。
錫めっきは無毒で食品衛生面でも安心でき、真鍮の腐食防止やはんだ付け性の改善に有効です。
一方、銀めっきは電気的特性に優れ、導電部品などでの信頼性を高めますが、硫化による変色を防ぐためには保護コーティングが必要になる場合もあります。

導電性を高めるめっき

真鍮は銅を多く含むため、ある程度の導電性を持ちますが、銅そのものよりは抵抗値が高くなります。そのため、電気接点や端子などでは、より優れた導電性を得るためにめっきが施されます。

銀めっきで導電性を最大化

銀は金属の中で最も電気伝導率が高く、電流の通りを良くするための最適な材料です。真鍮端子やコネクタの表面に銀めっきを施すことで、接触抵抗を低減し、安定した通電を実現します。
銀めっきは高電流を扱うスイッチやリレー端子、またはオーディオ機器などでも広く使われています。

金めっきで信頼性を確保

一方で、金めっきは導電性が高いだけでなく、酸化しにくいという大きな利点を持っています。
真鍮の表面に金めっきを施すことで、湿気や空気中の硫化物による酸化皮膜の形成を防ぎ、接点の信頼性を維持できます。特に通信機器や高精度電子部品では、金めっきが選ばれるケースが多いです。

錫めっきでコストバランスを取る

コスト面でのバランスを考慮する場合、錫めっきも有効な選択肢です。導電性は銀や金に劣るものの、はんだとの濡れ性が良く、電気的接続部の安定性を保つことができます。
真鍮のコネクタピンや端子台などで多用されています。

耐摩耗性・機械的保護を目的とするめっき

真鍮は柔らかく加工しやすい反面、摩耗や傷がつきやすいという弱点があります。
そのため、ニッケルやクロムのような硬質めっきを施すことで、表面の耐久性を高めることが可能です。

ニッケルめっきで耐摩耗性を向上

ニッケルは硬度が高く、耐摩耗性に優れているため、真鍮部品を機械的な摩擦や衝撃から守ります。スイッチ部品や機構パーツなど、頻繁に動く箇所で採用されることが多いです。

クロムめっきで表面保護

クロムめっきはさらに硬度が高く、滑り性も良いため、摺動部や装飾と機能を兼ねる部品に最適です。
真鍮の上にニッケル下地を施し、その上にクロムめっきを行うことで、見た目の美しさと高い耐摩耗性を両立できます。

めっき前処理の重要性

真鍮へのめっきでは、下地処理が非常に重要です。表面に油分や酸化膜が残っていると、めっきの密着が悪くなり、剥がれや変色の原因になります。
一般的には、以下のような工程を経てからめっきが行われます。

  • 脱脂(油分・汚れの除去)
  • 酸洗い(酸化皮膜の除去)
  • 活性化処理(表面の電気化学的な清浄化)

このような下地処理を丁寧に行うことで、めっき層が均一に密着し、外観・防食・導電いずれの性能も最大限に引き出せます。

まとめ:目的に応じためっき選定が重要

真鍮にめっきを施す理由は、「見た目」「防錆」「導電性」と多岐にわたります。
装飾性を重視するならニッケル・クロム・金、電気特性を重視するなら銀・錫・金、防食性を重視するならニッケルや錫めっきが適しています。
また、下地処理の良否が仕上がりを左右するため、実用性の高い部品製造では工程管理も重要になります。

真鍮はもともと美しく、加工性の良い素材ですが、用途や環境に合わせためっき処理を施すことで、見た目の美しさだけでなく、長期的な耐久性・信頼性も高められるのです。

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