ステンレスの表面仕上げ種類(#400・HL・鏡面など)
金属加工.comをご覧いただき、誠にありがとうございます。
本サイトは、山梨県・長野県にて切削加工やろう付けを行っている 北東技研工業株式会社 が運営しております。
金属加工に関するお困りごとがございましたら、ぜひお気軽に当社までご相談ください。
ステンレスは「錆びにくく」「美しい光沢を持ち」「加工性が高い」という特徴から、建築、家電、食品機器、医療機器など、さまざまな分野で使われています。そのステンレスの見た目や機能を決める大きな要素が「表面仕上げ」です。
同じステンレスでも、仕上げ方法によって外観や光沢、触感、耐食性などが大きく変化します。ここでは、代表的な仕上げの種類(#400、HL、鏡面仕上げなど)について、特徴や用途をわかりやすく解説します。
ステンレスの表面仕上げとは
ステンレスの表面仕上げとは、ステンレス板の表面を研磨や化学処理などで整える工程を指します。目的は主に次の3つです。
- 外観の向上:艶や光沢を出して美観を高める
- 機能性の付与:耐食性、清掃性、摩耗性などを向上
- 加工性や溶接性の改善:製造工程での作業性を良くする
同じステンレスでも、仕上げ方法によって「見た目」「触感」「性能」が大きく異なります。そのため、使用目的に合わせた表面仕上げを選ぶことが非常に重要です。
ステンレスの表面仕上げには、JIS規格(JIS G 4305など)で定められた種類があります。ここでは代表的なものを取り上げ、それぞれの特徴と用途を紹介します。
2B仕上げ(一般的な冷間圧延仕上げ)
特徴
2B仕上げは、最も一般的なステンレス表面仕上げの一つです。冷間圧延後に酸洗いを行い、その後に軽いスキンパス圧延(平滑化)を施したものです。表面はやや鈍い銀白色で、わずかに反射しますが鏡面ではありません。
長所
- 均一な光沢で、汚れが目立ちにくい
- 加工性が良く、曲げやプレスに向く
- コストが安く、汎用性が高い
主な用途
厨房機器、家電製品の内部部品、建築用裏面材、車両内装など、外観よりも機能性を重視する場面で広く使われます。
BA仕上げ(Bright Annealed:光輝焼鈍仕上げ)
特徴
BA仕上げは、光輝焼鈍(こうきやきなまし)という特殊な熱処理を行い、焼鈍時に酸化スケールを付けないように真空または保護ガス中で処理します。その結果、非常に滑らかで光沢のある表面となります。
長所
- 高い光沢で美しい外観
- 酸化皮膜が少なく、耐食性が高い
- 清掃しやすく衛生的
主な用途
冷蔵庫の内装、厨房設備、装飾パネル、医療機器など、清潔さや見た目が重視される分野でよく使われます。
#400仕上げ(バフ研磨仕上げ)
特徴
#400仕上げは、研磨ベルトや砥石でステンレス表面を磨き、細かい研磨痕が残る程度の半光沢仕上げです。数字の「#」は研磨粒度を示し、#400は比較的細かい仕上げを意味します。2Bよりも明るく、BAよりはやや落ち着いた光沢感です。
長所
- 落ち着いた光沢で高級感がある
- 表面の微細なキズが目立ちにくい
- 外観と機能のバランスが良い
主な用途
建築内装(エレベーター、手すり、ドアパネルなど)、家電外装、厨房機器、装飾パーツなど。見た目と耐久性のバランスが取れた仕上げとして人気があります。
HL仕上げ(Hair Line:ヘアライン仕上げ)
特徴
HL仕上げは、ステンレス表面に一定方向の細かい筋(ヘアライン)をつける研磨方法です。髪の毛のような細い線が連続していることから、この名前が付いています。マット調で落ち着いた質感が特徴です。
長所
- 高級感があり、建築意匠性が高い
- 指紋や小キズが目立ちにくい
- 均一な仕上がりでデザイン性に優れる
主な用途
建築外装、エレベーターパネル、駅構内の壁面、什器、家具など。特に「高級感」と「メンテナンス性」を両立したい場合に選ばれます。
鏡面仕上げ(ミラー仕上げ)
特徴
鏡面仕上げは、ステンレス表面をバフ研磨で鏡のように磨き上げた最も光沢のある仕上げです。完全に平滑化され、周囲を映り込むほどの反射があります。
長所
- 最も美しい光沢を持つ
- 酸化皮膜がなく、耐食性が非常に高い
- 清掃がしやすく、衛生的
注意点
- 指紋や汚れが目立ちやすい
- 表面が柔らかく、キズが付きやすい
主な用途
建築装飾、車両外装、デザイン家具、アート作品、ホテル内装、看板など、意匠性を最重視する場所で使用されます。
No.1仕上げ(熱間圧延酸洗仕上げ)
特徴
No.1仕上げは、熱間圧延したままのステンレス板を酸洗いして酸化スケールを除去した状態の仕上げです。光沢はなく、やや粗い表面です。
長所
- 強度が高く、厚板に適する
- 機械的特性を維持しやすい
- コストが安い
主な用途
工業設備、タンク、ボイラー、化学装置など、外観よりも機能性や強度を重視する場面で多用されます。
ステンレス表面仕上げの選び方
目的別の選定ポイント
| 使用目的 | 適した仕上げ | 特徴 |
|---|---|---|
| 外観・デザイン重視 | HL仕上げ、鏡面仕上げ | 美観・高級感を重視 |
| 加工・成形重視 | 2B仕上げ、BA仕上げ | 曲げ加工やプレス加工がしやすい |
| 耐久・強度重視 | No.1仕上げ | 機械構造用・厚板 |
| 衛生・清掃性重視 | BA仕上げ、鏡面仕上げ | 汚れが落ちやすく清潔 |
| コスト重視 | 2B仕上げ | 低コストで汎用性が高い |
表面仕上げによる耐食性の違い
ステンレスの耐食性は化学成分(特にクロム含有量)で決まりますが、表面の状態も大きく影響します。
例えば、鏡面仕上げやBA仕上げのように滑らかな表面は、水分や汚れが付着しにくく、錆の発生を防ぎやすいです。
一方で、No.1仕上げや粗い研磨面では、微細な凹凸に水や塩分が残りやすく、腐食の原因になることがあります。
そのため、屋外や湿気の多い環境では、できるだけ平滑な仕上げを選ぶことが推奨されます。
仕上げ後のメンテナンスも重要
どの仕上げであっても、定期的な清掃とメンテナンスが長期的な美観維持に欠かせません。
特にHLや鏡面仕上げは、汚れや指紋が目立つため、専用のクリーナーや柔らかい布で拭き取ると良いでしょう。
また、酸性や塩分を含む環境では、ステンレスでも「もらい錆」や「点錆」が発生することがあるため注意が必要です。
まとめ
ステンレスの表面仕上げは、外観だけでなく、耐食性や加工性にも影響を与える重要な要素です。
#400やHL、鏡面といった仕上げは、それぞれに異なる個性と用途を持っています。
- 2B仕上げ:汎用性とコストバランスが良い
- BA仕上げ:清潔感と光沢を両立
- #400仕上げ:高級感と実用性の中間
- HL仕上げ:意匠性とキズの目立ちにくさ
- 鏡面仕上げ:最も美しく、最もデリケート
- No.1仕上げ:構造用途に最適
使用環境や目的に合わせて最適な仕上げを選ぶことで、ステンレスの性能を最大限に引き出すことができます。
美しさと耐久性を両立するステンレスの魅力は、表面仕上げによってさらに輝きを増すのです。
いかがでしたでしょうか?
金属加工.comでは、他にも金属加工関連の情報を発信しております。他にも気になる記事がありましたら、是非ご覧ください。
金属加工.comのトップページはこちら↓

関連記事はこちら↓

