JIS

ステンレスの国際規格比較(JIS・ASTM・DIN)

mw2pp0jd6c

金属加工.comをご覧いただき、誠にありがとうございます。
本サイトは、山梨県・長野県にて切削加工やろう付けを行っている 北東技研工業株式会社 が運営しております。
金属加工に関するお困りごとがございましたら、ぜひお気軽に当社までご相談ください。

ステンレス鋼は、耐食性や強度、加工性に優れることから、自動車、建築、化学プラント、食品機械、医療機器など、幅広い分野で利用されています。その用途が国境を越えることも多いため、国際的に統一された規格に基づいた材料の選定や調達が重要になります。
しかし実際には、各国や地域で定められた規格が存在し、同じステンレスでも表記や分類方法が異なります。代表的なものが、日本のJIS規格(Japanese Industrial Standards)、アメリカのASTM規格(American Society for Testing and Materials)、そしてドイツを中心とした欧州規格であるDIN規格(Deutsches Institut für Normung)です。

ここでは、それぞれの規格の特徴や分類方法、代表鋼種の対応関係などを比較し、国際的にステンレスを理解するためのポイントを解説します。

JIS規格(日本工業規格)の特徴

日本におけるステンレス規格は、主に「JIS G 4303(ステンレス鋼棒)」や「JIS G 4304(ステンレス熱間圧延鋼板)」といった形で規定されています。JISは日本の工業製品全般を対象とする規格であり、ステンレス鋼については組成や機械的性質、耐食性、加工特性などが詳細に定められています。

JISにおける鋼種の表記方法

JISでは「SUS(Steel Use Stainless)」という記号が使われ、その後に数字が続きます。
例:

  • SUS304(オーステナイト系ステンレス鋼、最も一般的に使用される)
  • SUS316(モリブデンを添加した耐食性に優れる鋼種)
  • SUS430(フェライト系ステンレス鋼、磁性を持つ)

SUS記号は、日本国内で広く使われているため、建築や製造の現場でも認知度が高く、現場作業者にも浸透しています。

JISの特徴

  • 日本国内での取引や設計において基準となる
  • 表記がわかりやすく、SUSという統一記号で整理されている
  • 海外規格との比較表が整備されているため、国際対応も容易

ASTM規格(米国材料試験協会規格)の特徴

ASTM規格は、アメリカを中心に国際的に広く利用される規格で、世界的な材料調達の基準として最も影響力があります。ステンレス鋼については「ASTM A240(クロムおよびクロム・ニッケルステンレス鋼板)」など、多くの規格が存在しています。

ASTMにおける鋼種の表記方法

ASTMでは、ステンレス鋼は「UNS(Unified Numbering System)」で分類されます。UNSはアルファベット1文字と5桁の数字で構成されます。
例:

  • UNS S30400(JIS SUS304に対応)
  • UNS S31600(JIS SUS316に対応)
  • UNS S43000(JIS SUS430に対応)

また、ASTM規格書には、化学成分の範囲、機械的性質、試験方法などが細かく定義されているため、国際取引での信頼性が高いのが特徴です。

ASTMの特徴

  • 世界中で最も広く参照される材料規格
  • UNS番号によって統一的に分類されるため、国際比較が容易
  • JISに比べて規格の種類が豊富で、特殊用途にも対応している

DIN規格(ドイツ規格)の特徴

DIN規格は、ドイツを中心に欧州で利用されてきた規格で、現在はEN規格(欧州規格)と統合される傾向にあります。特に金属材料の分野では長年の歴史を持ち、精緻で詳細な規定が特徴です。

DINにおける鋼種の表記方法

DINでは、化学組成を基準にした記号体系を採用しています。ステンレス鋼は「X」を冠した記号で表され、炭素量や合金元素の割合を示します。
例:

  • X5CrNi18-10(JIS SUS304に対応)
  • X2CrNiMo17-12-2(JIS SUS316に対応)
  • X6Cr17(JIS SUS430に対応)

この表記は一見複雑に見えますが、化学成分を直接読み取れるため、材料の特性を把握しやすいという利点があります。

DINの特徴

  • 成分を基準にした表記で、技術者にとって理論的に理解しやすい
  • 欧州域内での標準化に強く、国際規格(EN)との整合性が高い
  • 化学組成から直接鋼種の特性を把握できるため、学術的・技術的な透明性が高い

代表的な鋼種の規格対応表

ステンレス鋼の代表的な種類について、JIS、ASTM、DINの対応関係を整理すると以下のようになります。

用途・分類JIS規格ASTM(UNS)DIN規格
汎用オーステナイト系SUS304S30400X5CrNi18-10
耐食性強化SUS316S31600X2CrNiMo17-12-2
フェライト系SUS430S43000X6Cr17
析出硬化系SUS630S17400X5CrNiCuNb16-4

このように、同じ材料であっても規格ごとに表記が異なります。国際的な取引や輸出入においては、この対応関係を正確に理解しておくことが必須です。

国際規格比較の実務的な意義

ステンレスの国際規格比較は、単なる学術的な興味ではなく、実務上の重要な意味を持っています。

調達・購買における意義

海外から材料を輸入する場合、JIS表記だけでは通用せず、ASTMやDINの表記で仕様書を準備する必要があります。特に海外サプライヤーとの取引では、UNS番号やDIN記号を併記することが一般的です。

設計・製造における意義

グローバル展開する企業では、設計段階から国際規格に基づいた材料選定を行う必要があります。ASTMやDINの記号が設計図面に記載されるケースも多く、エンジニアには各規格の対応関係を理解しておく知識が求められます。

品質保証における意義

製品が国際市場に流通する場合、規格の整合性が確認できなければ、品質保証やトレーサビリティが確保できません。材料証明書(ミルシート)には複数の規格番号が記載されることも多く、それを正しく読み解くことが必要です。

今後の国際規格の動向

近年では、国際的な規格の統一が進められています。欧州ではDINからEN(European Norm)規格への移行が進み、さらにISO規格(国際標準化機構)との整合性を高める流れがあります。日本のJISやアメリカのASTMも、ISOとの共通化を意識して改訂が行われるケースが増えてきました。

将来的には、世界的に統一された材料規格に近づくことが期待されますが、各国の産業背景や歴史的経緯が異なるため、完全統一には時間がかかると予想されます。そのため当面は、JIS・ASTM・DINを中心とした複数規格を理解し、相互対応を把握することが不可欠です。

まとめ

ステンレス鋼の国際規格は、JIS、ASTM、DINという三つの代表的な体系が存在し、それぞれに特徴があります。

  • JISは日本国内での利便性に優れ、SUS記号でわかりやすい
  • ASTMは世界的に最も広く使われ、UNS番号で統一的に分類される
  • DINは成分を直接表す体系で、欧州を中心に強い影響力を持つ

同じ材料でも規格によって表記が異なるため、国際的なビジネスや製造現場では、対応関係を正しく理解することが求められます。特にグローバル化が進む現代では、規格を読み解くスキルがエンジニアや調達担当者にとって不可欠です。

今後、国際規格の統合が進む中でも、現場では複数の規格が併存する状況が続くと考えられます。したがって「JIS・ASTM・DINを横断的に理解すること」が、ステンレスを扱ううえでの基本的なリテラシーとなるでしょう。

いかがでしたでしょうか?
金属加工.comでは、他にも金属加工関連の情報を発信しております。他にも気になる記事がありましたら、是非ご覧ください。

金属加工.comのトップページはこちら↓

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: 1-6-1024x116.png

関連記事はこちら↓

記事URLをコピーしました