ろう付け加工関連

ろう付けにおける酸化膜除去の重要性

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ろう付けは、金属同士を高温で接合する加工法の一つであり、工業製品や装飾品など、幅広い分野で利用されています。しかし、ろう付けの工程でしばしば問題となるのが「接合不良」です。その大きな原因の一つが、金属表面に形成される酸化膜です。本記事では、酸化膜がろう付けに与える影響と、その除去の重要性、具体的な方法について詳しく解説します。

酸化膜とは何か

金属は空気中の酸素と反応することで、表面に酸化膜を形成します。例えば銅であれば酸化銅、アルミニウムであれば酸化アルミニウムが表面に生じます。この酸化膜は非常に薄い層ですが、ろう材が金属と化学的に結合するのを阻害します。

酸化膜の性質は金属の種類によって異なります。鉄の酸化膜は比較的容易に還元されますが、アルミニウムの酸化膜は非常に安定しており、単純な加熱では除去が困難です。銅や真鍮でも酸化膜は形成されますが、適切な処理を行うことでろう付けを可能にすることができます。

酸化膜がろう付けに及ぼす影響

酸化膜が残ったままろう付けを行うと、以下のような問題が生じます。

ろう材の濡れ性の低下

ろう材は母材に溶融して濡れることで接合部に広がります。しかし酸化膜があると、ろう材が母材表面に接触できず、十分に広がりません。これにより、接合部に空隙が生じたり、強度が低下したりします。

接合強度の低下

酸化膜はろう材と母材の間に介在するため、ろう材が本来持つ結合力を発揮できません。結果として、接合部の破壊強度が低下し、応力が集中しやすくなります。特に機械部品や配管など、耐圧性が求められる箇所では重大な問題となります。

外観不良の発生

酸化膜の影響でろう材が均一に広がらない場合、接合部に凹凸や黒ずみが生じることがあります。装飾品や電子部品など、外観が重要な製品では、酸化膜除去は必須と言えます。

酸化膜除去の基本原理

酸化膜除去には物理的除去と化学的除去の2つの方法があります。

物理的除去

物理的除去は、研磨やブラスト処理など、表面を直接削ることで酸化膜を取り除く方法です。研磨布やサンドペーパー、金属ブラシを用いて表面を滑らかにすることで、酸化膜を除去できます。

メリットとしては、処理が簡単で即効性がある点です。デメリットは、母材表面を傷つける可能性があることと、大規模部品や複雑形状の部品には不向きである点です。

化学的除去

化学的除去は、酸やアルカリなどの薬液を用いて酸化膜を溶解する方法です。銅や真鍮では希硫酸や硝酸を薄めた溶液を用いることが一般的で、アルミニウムの場合はフッ化水素系の溶液が使われることもあります。

化学的除去は、複雑形状でも均一に処理できる点がメリットですが、薬品の取り扱いに注意が必要です。適切な濃度や浸漬時間を守らないと、母材自体を損傷する危険があります。

フラックスの役割と酸化膜除去

ろう付け工程では、多くの場合フラックスが使用されます。フラックスは酸化膜を化学的に還元する作用を持ち、ろう材の濡れ性を高める効果があります。つまり、フラックスは酸化膜除去の補助的な役割を果たしているのです。

ただし、フラックスだけに頼るのは危険です。酸化膜が厚く、硬化している場合はフラックスでも十分に除去できず、接合不良につながります。そのため、事前に物理的または化学的処理で酸化膜を取り除き、フラックスで最終的な仕上げを行うのが理想的です。

酸化膜除去の工程例

銅や真鍮のろう付けを例に、酸化膜除去から接合までの典型的な工程を紹介します。

  1. 表面研磨:研磨布やブラシで表面の酸化膜を物理的に除去します。
  2. 脱脂洗浄:油分や汚れを洗浄剤で除去します。油分が残るとろう材の濡れ性が低下します。
  3. 化学処理(必要に応じて):酸溶液に短時間浸漬し、酸化膜を化学的に除去します。
  4. フラックス塗布:接合面に均一に塗布し、加熱時の酸化防止と濡れ性向上を図ります。
  5. ろう付け加熱:適切な温度で加熱し、ろう材を接合面に浸透させます。
  6. 冷却・洗浄:接合後は自然冷却または水冷し、残留フラックスを洗浄します。

この工程を丁寧に行うことで、接合強度の高い、均一なろう付けが可能になります。

酸化膜除去が重要な事例

酸化膜除去の重要性は、特に以下のような製品で顕著です。

  • 電子部品や基板の接続:微細な配線では、酸化膜が残ると通電不良を起こすことがあります。
  • 配管や高圧容器:耐圧性や密閉性が求められるため、接合不良は大きな事故につながります。
  • 装飾品や芸術品:外観や仕上がりの美しさが重要で、酸化膜による変色や凹凸は致命的です。

これらの事例では、酸化膜をいかに完全に除去できるかが、ろう付け品質の鍵となります。

まとめ

ろう付けにおける酸化膜は、接合不良の主原因の一つであり、除去の有無が最終的な接合強度や外観に直結します。物理的、化学的手法を適切に組み合わせ、フラックスの効果を最大限活用することが、良好な接合を実現するポイントです。特に高精度な製品や安全性が求められる部品では、酸化膜除去を怠ることは許されません。ろう付けの成功には、母材表面の状態を見極め、計画的に酸化膜除去を行うことが不可欠です。
酸化膜の管理と除去を徹底することで、ろう付けの品質は格段に向上します。接合部の強度、外観、耐久性を確保するために、日々の作業で酸化膜への意識を高めることが、良い製品作りの第一歩です。

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