ろう付けとはんだ付けの違い
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金属同士を接合する方法にはいくつかの手法があります。その中でも、古くから幅広い分野で利用されてきたのが「ろう付け」と「はんだ付け」です。どちらも溶接の一種と誤解されることがありますが、厳密には異なる工法であり、使用する温度や材料、用途に大きな違いがあります。本記事では、ろう付けとはんだ付けの違いを、初心者でも理解しやすい形で解説していきます。
ろう付けとは何か
ろう付けとは、母材(金属の部品本体)を溶かさずに、融点の低い「ろう材」を加熱して溶かし、毛細管現象によって隙間に流し込み、金属を接合する方法です。ろう材の融点はおおよそ450℃以上で、銀ろうや銅ろうなどの種類がよく使われます。母材を変形させることなく強固な接合が可能であるため、航空宇宙、冷却機器、自動車部品、精密機械など、強度と信頼性が求められる分野で広く利用されています。
ろう付けは「溶接」とは異なり、母材そのものを溶かすことはありません。そのため母材の性質を保持でき、異種金属の接合にも対応しやすいのが大きな特徴です。
はんだ付けとは何か
はんだ付けは、電子部品の取り付けや電気配線に欠かせない接合技術です。ろう付けと同じく母材を溶かさず、融点の低い「はんだ」を溶かして接合します。はんだの融点はおよそ450℃未満であり、代表的なものは錫(すず)や鉛をベースにした合金です。近年では鉛フリーはんだが主流となっており、錫と銀、銅の合金がよく使用されています。
はんだ付けは比較的低温で作業ができるため、電子基板上の小型部品を熱で傷めずに接合できます。ただし、ろう付けに比べると接合強度は低く、主に電気的な導通を目的とした接合に用いられるのが一般的です。
融点と使用温度の違い
ろう付けとはんだ付けを区別する最も大きな基準は「融点」です。国際的な定義でも、450℃を境界線として、450℃以上で用いられるろう材を使った接合を「ろう付け」、450℃未満で用いられるはんだを使った接合を「はんだ付け」と分類しています。
- ろう付け:450℃以上の融点を持つろう材を使用
- はんだ付け:450℃未満の融点を持つはんだを使用
この温度の違いは、使用される部品の材質や接合後の性能に直結します。ろう付けは高温に耐えられる金属部品同士を強固に接合できる一方、はんだ付けは電子部品のような熱に弱い対象でも扱える利点があります。
強度と用途の違い
ろう付けとはんだ付けのもう一つの重要な違いは、接合強度です。
ろう付けは高温でろう材を流し込み、母材と冶金的に強く結びつくため、機械的強度が高い接合部を形成できます。そのため、圧力がかかる配管や、耐久性が必要な機械部品の接合に多用されます。特に冷凍機やエアコンの熱交換器、さらには自動車の燃料系統など、安全性が求められる分野で使用されています。
一方ではんだ付けは、強度そのものは高くありません。指で簡単に折り曲げられる程度の接合力しか持たないことも多いですが、電気的な導通を確実に確保できるため、電子基板の回路形成や部品の固定に最適です。電気製品、パソコン、スマートフォンなど、私たちの生活を支える電子機器には、無数のはんだ付け箇所が存在します。
使用する材料の違い
ろう付けに使用されるろう材は、主に銀ろう、銅ろう、アルミろう、ニッケルろうなどがあります。これらは高温に耐える金属合金で、接合強度と耐食性を両立するように設計されています。特に銀ろうは流動性が高く、強度と信頼性に優れるため多くの分野で重宝されています。
はんだ付けに使用されるはんだ材は、かつては鉛と錫の合金が主流でした。しかし環境問題や人体への影響から、鉛を含まない鉛フリーはんだが現在は主流となっています。錫に銀や銅を添加した合金はんだが広く使われ、低温で溶けるため電子部品を熱から守りつつ接合が可能です。
フラックスの役割の違い
ろう付けとはんだ付けの両方に共通するのが「フラックス」の使用です。フラックスは接合面の酸化膜を除去し、ろう材やはんだの濡れ性を高める役割を果たします。
ろう付けの場合、母材の種類に応じてフラックスを選定する必要があり、高温下でも機能を保てるものが用いられます。たとえば銀ろう用のフラックスは高温でも分解せず、酸化被膜を取り除き続けます。
はんだ付けの場合は、電子部品の表面を清浄化するためのロジン系フラックスなどが使われます。近年は洗浄不要タイプのフラックスも登場しており、製造工程の簡略化に寄与しています。
作業方法の違い
ろう付けは、トーチバーナーや炉を用いて高温で加熱することが多く、作業環境や設備がやや大掛かりになります。精密部品を一括して接合する場合は炉中ろう付け、大きな部品や局所的な接合にはトーチろう付けが選ばれます。
一方ではんだ付けは、はんだごてやリフロー炉など、比較的簡単な設備で行うことができます。特に手作業での修理や電子工作では、はんだごて一本で対応できる手軽さが大きな魅力です。
信頼性の違い
ろう付けは、接合後の強度や耐久性が非常に高く、長期にわたって安定した性能を発揮します。熱や圧力にさらされる環境下でも接合が維持されるため、工業製品の信頼性向上に大きく貢献しています。
はんだ付けは、強度面では劣るものの、電気的信頼性が重要な分野で欠かせません。電子回路においては、導通不良や接触不良を防ぎつつ、部品を確実に固定する役割を果たします。製品寿命を左右する重要な工法である点は、ろう付けと共通しています。
ろう付けとはんだ付けを使い分けるポイント
実際のものづくりの現場では、ろう付けとはんだ付けを明確に使い分ける必要があります。
- 強度や耐久性を重視する → ろう付け
- 電気的導通を重視する → はんだ付け
- 高温環境や機械的応力に耐える必要がある → ろう付け
- 電子回路や精密機器の組立 → はんだ付け
このように、それぞれの特性を理解して選択することが、製品品質の確保につながります。
まとめ
ろう付けとはんだ付けは、一見似たような金属接合方法に見えますが、融点、強度、用途、使用材料など、多くの点で異なっています。ろう付けは高温・高強度が必要な分野で活躍し、はんだ付けは低温・低強度でも電気的信頼性を確保したい分野で使われます。
どちらも私たちの生活を支える重要な技術であり、適材適所で選択されることによって、安心・安全な製品の提供が可能となります。ものづくりに携わる人にとって、この二つの技術の違いを正しく理解することは欠かせない知識と言えるでしょう。
いかがでしたでしょうか?
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