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鉄鋼材料の製造プロセス(製鉄~圧延まで)

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私たちの身の回りにある建物、車、家電、機械部品など、多くの製品に使われている「鉄鋼材料」。その製造には、長い工程と高い技術が関わっています。
本記事では、鉄鉱石から鉄鋼材料ができるまでの流れ、すなわち「製鉄」から「圧延」までのプロセスをわかりやすく解説します。

鉄鋼材料とは何か

鉄鋼材料とは、主成分である鉄(Fe)に炭素や他の元素を加えて作られる金属材料の総称です。大きく分けると「鉄」と「鋼(はがね)」に分類されます。

  • 鉄(純鉄):炭素含有量が非常に少ない(0.02%以下)鉄で、柔らかく磁性が強い。
  • 鋼(はがね):炭素を0.02~2.14%程度含む鉄合金。強度と靱性のバランスが良い。
  • 鋳鉄(ちゅうてつ):炭素を2.14%以上含み、硬いが脆い性質を持つ。

鉄鋼材料は、その加工性・強度・コストバランスの良さから、あらゆる産業の基盤を支える「構造材料」として利用されています。

鉄鋼の製造プロセスの全体像

鉄鋼ができるまでの流れは、主に次のステップで構成されています。

  1. 原料の準備(鉄鉱石・石炭・石灰石など)
  2. 製鉄(高炉などで鉄鉱石を還元して銑鉄を作る)
  3. 製鋼(銑鉄から不純物を除去し、鋼を作る)
  4. 連続鋳造(溶けた鋼を固めてスラブなどにする)
  5. 圧延(スラブを加熱・圧縮して板や棒に成形する)

それでは、各工程を順を追って詳しく見ていきましょう。

製鉄:鉄鉱石から銑鉄をつくる工程

鉄鉱石とコークスの役割

鉄鉱石は、鉄分を多く含む鉱石で、主な成分は酸化鉄(Fe₂O₃)です。これをそのままでは使えないため、還元反応を利用して酸素を取り除き、鉄分を取り出します。
この還元に使われるのが「コークス」と呼ばれる燃料です。石炭を高温で加熱し、不純物を飛ばして炭素を濃縮したもので、還元剤としても燃料としても機能します。

高炉での製鉄プロセス

製鉄所の中心となる設備が「高炉(こうろ)」です。高さ100メートル前後の巨大な炉の中で、鉄鉱石・コークス・石灰石を層状に投入します。
炉内では約2000℃にも達し、以下の反応が進行します。

  1. コークスが燃焼して一酸化炭素を発生
  2. 一酸化炭素が鉄鉱石中の酸素と結びつき、鉄(Fe)を還元
  3. 溶けた鉄は炉の底に溜まり、「銑鉄(せんてつ)」となる

銑鉄はまだ炭素を4~5%含むため、そのままでは硬く脆く、構造材料としては使えません。この後に行われる「製鋼工程」で、不要な炭素や不純物が取り除かれます。

製鋼:銑鉄を鋼に精製する工程

転炉による製鋼

製鉄工程で得られた銑鉄を鋼に変えるには、酸素を吹き込み、不純物を酸化除去します。この工程を「製鋼」と呼び、主に「転炉(てんろ)」が使われます。

転炉は内部が耐火煉瓦で覆われた巨大な容器で、上から溶銑を注ぎ、酸素を吹き込みます。酸素と炭素が反応してCO・CO₂を発生させ、炭素が除去されます。
また、硫黄・リン・ケイ素などの不純物も同時に酸化・スラグ化(溶融スラグとして除去)されます。

この結果、炭素量が適正範囲(約0.02~2%)に調整され、構造用として使える「鋼(はがね)」が得られます。

電気炉による製鋼

一方、スクラップ鉄を主原料とする場合は「電気炉」が使われます。電極に高電圧をかけてアーク放電を発生させ、その熱で鉄を溶かします。
電気炉は小規模・高効率で、リサイクル鉄の再利用に適しており、環境負荷の低い製造方法として注目されています。

連続鋳造:鋼を固体に変える工程

製鋼で得られた鋼は高温の液体状態です。この溶鋼を固めて「スラブ」「ブルーム」「ビレット」と呼ばれる半製品にするのが「連続鋳造(CC:Continuous Casting)」工程です。

連続鋳造の仕組み

連続鋳造では、溶鋼を水冷された鋳型(モールド)に流し込み、連続的に冷却して固化させます。
鋳型の下部から引き抜くことで、連続的に鋼の塊が生成され、必要な形状やサイズにカットされます。

生成される形状によって名称が異なります。

  • スラブ(Slab):板材用。薄板や鋼板の原料。
  • ブルーム(Bloom):形鋼用。H形鋼などの原料。
  • ビレット(Billet):棒鋼や線材用。

この工程により、鋼が扱いやすい固体形状となり、次の「圧延」工程へと進みます。

圧延:鋼を所定の形状に加工する工程

圧延の基本原理

圧延とは、金属を高温または常温で回転するロールの間を通し、厚さや形状を整える加工法です。
鉄鋼業では主に「熱間圧延」と「冷間圧延」が行われます。

熱間圧延(Hot Rolling)

熱間圧延は、鋼を再結晶温度(約900〜1200℃)以上に加熱して行う加工です。
高温状態では金属が柔らかくなり、変形しやすくなるため、大きな塑性加工が可能です。

この工程では、スラブを加熱炉で再加熱し、粗圧延機・仕上げ圧延機を通して目的の厚さに加工します。
熱間圧延で得られる製品は次の通りです。

  • 熱延鋼板(自動車や建築資材に使用)
  • 形鋼(H形鋼、角鋼など)
  • 鋼管・棒鋼・線材など

冷間圧延(Cold Rolling)

熱間圧延で得られた鋼板を常温でさらに薄く延ばすのが冷間圧延です。
常温での加工のため、表面が滑らかで寸法精度が高く、機械的強度も向上します。
主に家電製品、車体外板、缶材などに使用されます。

表面処理と仕上げ工程

圧延後の鋼材は、用途に応じてさまざまな表面処理が施されます。
代表的なものとして以下があります。

  • 酸洗:圧延中にできる酸化スケールを酸で除去する。
  • メッキ処理:防錆・美観のために亜鉛やクロムをコーティングする。
  • 焼鈍(しょうどん):内部応力を除去し、延性を回復させる熱処理。

これらの工程を経て、鋼材は出荷され、自動車部品、建築資材、機械フレームなどへと姿を変えます。

環境に配慮した鉄鋼製造への取り組み

近年、鉄鋼業界でもカーボンニュートラルへの対応が求められています。特に課題となるのは、高炉でのCO₂排出です。
その対策として、以下のような技術開発が進んでいます。

  • 水素還元製鉄:コークスの代わりに水素を使い、CO₂ではなく水(H₂O)を生成する製法。
  • 電気炉化の推進:再生可能エネルギーを使ってスクラップを溶解。
  • 排熱回収・エネルギー効率化:高温ガスや排熱を再利用する仕組みの導入。

こうした取り組みは、「環境対応型製鉄」として世界中で注目されており、今後の鉄鋼業の持続可能性を左右する重要なテーマとなっています。

まとめ

鉄鋼材料が私たちの手に届くまでには、数多くの工程と技術が関わっています。

  1. 鉄鉱石を高炉で還元し「銑鉄」を得る
  2. 転炉や電気炉で不純物を除去し「鋼」を精製する
  3. 連続鋳造で固体化し、スラブ・ビレットなどにする
  4. 圧延で板や棒に加工し、表面処理で仕上げる

この一連の流れを経て、鉄鋼は社会のあらゆる場所で利用される素材となります。
今後は、環境負荷を抑えながら高品質な鉄鋼を生み出す技術革新が、業界全体の競争力を左右する時代に入っていくでしょう。

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