ステンレスでも錆びる?もらい錆の原因と防止策
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ステンレスは「錆びない金属」として広く知られていますが、実際には環境や条件によって錆びることがあります。その中でも特に注意が必要なのが「もらい錆」です。一見きれいなステンレス製品でも、気づかないうちに茶色いシミがついていたり、点状の錆が出ていることがあります。この記事では、もらい錆の原因と防止方法をわかりやすく解説します。
ステンレスはなぜ錆びにくいのか
不動態被膜による保護作用
ステンレスが錆びにくい理由は、「不動態被膜」と呼ばれる薄い酸化膜が表面を覆っているためです。この被膜は主にクロム酸化物で構成され、空気中の酸素と反応して自然に形成されます。不動態被膜があることで、鉄が直接酸素や水分に触れにくくなり、錆の発生を防ぐのです。
クロム含有量がポイント
ステンレスには一般的に11%以上のクロムが含まれており、このクロムが酸素と結びついて不動態被膜を作ります。クロム量が多いほど耐食性は高くなり、SUS304やSUS316などのオーステナイト系ステンレスは特に錆びにくいとされています。しかし、「錆びにくい=絶対に錆びない」わけではありません。
ステンレスが錆びる代表的な原因
もらい錆
ステンレスが錆びる最も一般的な原因が「もらい錆」です。これは、周囲の鉄や工具、鉄粉などがステンレス表面に付着し、それが錆びることで錆がステンレスに移る現象です。もらい錆によって発生した錆は、あたかもステンレス自体が錆びたように見えるため、誤解されることが多いです。
塩分の影響
海岸近くや冬季の凍結防止剤が撒かれる地域では、空気中の塩分が不動態被膜を破壊することがあります。塩化物イオンが被膜を浸食し、局部的に腐食が始まると、点状の錆が発生します。これを「孔食」と呼びます。
酸や薬品による腐食
酸性の薬品や漂白剤、塩素系洗剤などはステンレスにとって大敵です。これらの薬品が長時間付着すると、不動態被膜が化学的に溶かされ、錆が生じやすくなります。特に厨房や食品加工現場では注意が必要です。
施工や取り扱い時のダメージ
施工中にグラインダーで鉄材を加工した際の鉄粉が飛散して付着したり、鉄製の工具で擦れた傷に鉄が移ったりすることで、錆の発生が誘発されます。溶接部や研磨部など、表面が荒れている箇所は特に錆が出やすい傾向にあります。
もらい錆とは何か
もらい錆の仕組み
もらい錆とは、他の金属(主に鉄)が錆びることで発生した酸化鉄がステンレス表面に移り、それが錆びのように見える現象です。ステンレス自体の腐食ではなく、外部の鉄粉が原因で発生します。したがって、ステンレス表面を適切に清掃すれば除去できる場合も多いです。
よくあるもらい錆の発生例
- 鉄製の工具や釘をステンレスの上に置いた
- 鉄製部品の近くでステンレスを保管した
- 工事現場で鉄粉が飛散し、ステンレス表面に付着した
- 鉄製棚にステンレス製調理器具を置いていた
これらのように、鉄が関与する環境ではもらい錆が発生しやすくなります。
もらい錆を放置するとどうなるか
一見すると表面の汚れのようにも見えるもらい錆ですが、放置しておくとステンレスの不動態被膜を破壊し、内部まで腐食が進むことがあります。錆が広がると除去が難しくなり、最悪の場合には穴があいたり、強度が低下する恐れもあります。特に屋外設備や食品加工機器では、衛生面・安全面の問題にもつながります。
もらい錆の除去方法
軽度なもらい錆の除去
軽いもらい錆であれば、家庭用の中性洗剤とスポンジで洗うだけで落とせる場合があります。ステンレス用の研磨剤(クレンザー)を使うと、表面を傷つけずにきれいに仕上げられます。
ただし、スチールたわしなど鉄を含む道具を使うと、逆にもらい錆の原因になるため避けましょう。
酸洗いによる除去
頑固な錆や広範囲のもらい錆は、酸洗い(パッシベーション処理)が有効です。専用の酸性薬品で表面の酸化鉄を溶解し、その後に中和・洗浄して新たな不動態被膜を形成させます。これは工業的な処理方法であり、ステンレスの表面を再生する効果があります。
専用洗浄剤の使用
市販の「もらい錆除去剤」や「ステンレスクリーナー」も効果的です。これらは鉄粉の酸化物を化学的に分解し、表面の光沢を保ちながら清掃できます。使用後は必ず水でしっかり洗い流し、乾燥させることが重要です。
もらい錆を防ぐための対策
周囲の鉄粉・鉄製品に注意
鉄粉や鉄製工具の近くでステンレスを扱う際は、接触や飛散に注意が必要です。ステンレス部品を鉄材加工現場で保管するのは避け、作業後には必ず清掃を行いましょう。鉄粉がステンレス表面に残ると、後から錆が浮き上がってきます。
定期的な清掃と保護
屋外や湿度の高い環境では、定期的なメンテナンスが欠かせません。水や汚れを放置せず、柔らかい布で乾拭きして表面を清潔に保つことで、不動態被膜の健全性を維持できます。
また、ステンレス専用の防錆コート剤を塗布するのも効果的です。薄い皮膜を形成し、もらい錆や塩害から守ります。
使用環境に適したステンレスを選ぶ
環境条件に応じて、ステンレスの種類を選定することも大切です。
例えば、海岸近くの環境ではSUS316のようなモリブデンを含むステンレスが推奨されます。SUS304に比べて塩化物に強く、孔食が起きにくい特性があります。
機械加工後の処理を忘れない
溶接や研磨を行った後は、不動態被膜が損傷しているため、必ず酸洗いやパッシベーション処理を施しましょう。表面を均一に再生させることで、長期間にわたって耐食性を維持できます。
屋外・厨房・工場でのもらい錆事例
屋外設備での事例
屋外の手すりや看板支柱などでは、雨水とともに鉄粉や汚れが付着してもらい錆が発生します。特に都市部では、車のブレーキダストに含まれる鉄粉が飛散して付着することも多く、定期的な清掃が欠かせません。
厨房設備での事例
厨房のシンクや調理台では、鉄製の鍋や包丁との接触によりもらい錆が起きることがあります。また、塩分や酸性食品(酢、レモンなど)が付着したまま放置すると、不動態被膜が破壊されやすくなります。使用後は速やかに洗浄・乾燥することがポイントです。
工場・建築現場での事例
工場内でステンレス製品を扱う際、周囲で鉄の切削や溶接を行っていると、鉄粉が空気中を漂いステンレスに付着します。こうした微細な鉄粉が、時間の経過とともに酸化し、もらい錆を引き起こします。
作業エリアを分ける、もしくはステンレス製品にカバーをかけて保護するなどの工夫が必要です。
まとめ
ステンレスは非常に優れた耐食性を持つ金属ですが、もらい錆によって見た目が損なわれたり、腐食が進行することがあります。
もらい錆は主に外部の鉄粉や鉄製品の影響で発生し、ステンレス自体が錆びたわけではありません。しかし、放置すると表面被膜が破壊され、本格的な腐食へと発展する可能性もあります。
日常的な清掃、適切な使用環境、定期的なメンテナンスが、ステンレスの美しさと耐久性を長持ちさせる鍵です。鉄との接触を避け、清潔な状態を保つことが、もらい錆を防ぐ最善の対策といえるでしょう。
鉄の錆を防ぐことは、製品寿命を延ばすだけでなく、資源の有効活用やメンテナンスコスト削減にもつながります。錆のメカニズムを正しく理解し、効果的な防錆処理を行うことで、鉄の可能性を最大限に引き出すことができるのです。
いかがでしたでしょうか?
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