アルミ切削加工の特徴と注意点

金属加工.comをご覧いただき、誠にありがとうございます。
本サイトは、山梨県・長野県にて切削加工やろう付けを行っている 北東技研工業株式会社 が運営しております。
金属加工に関するお困りごとがございましたら、ぜひお気軽に当社までご相談ください。
アルミニウムは軽量で加工性に優れ、幅広い分野で利用されている金属です。自動車や航空機、電子部品、建材、精密機械など、私たちの生活を支える多くの製品に欠かせません。その中でも、部品の形状を高精度に仕上げる「切削加工」はアルミの特性を最大限に活かす方法の一つです。
本記事では、アルミ切削加工の特徴やメリット、注意点について詳しく解説します。これからアルミ加工に携わる方や、設計・製造に関わる方の参考になるよう、実務で役立つポイントを盛り込みました。
アルミニウムの基本特性
アルミニウムは金属の中でも比重が約2.7と鉄や銅に比べて軽量です。また、熱伝導率や電気伝導率が高いこと、耐食性に優れていることも大きな特徴です。さらに展延性や靭性が高く、塑性加工もしやすいため、幅広い加工方法に対応できます。
切削加工においては、以下の特性が大きく影響します。
- 軽く柔らかいため切削抵抗が小さい
- 切りくずが長く出やすく、絡まりやすい
- 熱伝導率が高く、工具摩耗が抑えられる一方で溶着が起こりやすい
- 表面に酸化皮膜が形成されるため、耐食性は高いが加工面の状態に影響を与えることもある
こうした性質を理解することが、アルミ切削加工の効率や品質を高める第一歩となります。
アルミ切削加工のメリット
アルミを切削する最大のメリットは、その加工性の高さです。鉄やステンレスと比べても刃物への負荷が小さく、スピーディーに削ることが可能です。
具体的なメリットを挙げると次の通りです。
- 高い生産性:高速切削が可能で、加工時間を短縮できる。
- 工具寿命が比較的長い:熱伝導性が高いため、切削点で発生した熱が拡散しやすい。
- 仕上げ面の精度が良い:適切な条件で加工すれば、鏡面に近い滑らかな仕上がりが得られる。
- 複雑形状にも対応しやすい:軽く柔らかいため、微細加工や薄肉加工に適している。
これらの点から、アルミは試作品から量産品まで幅広い加工に選ばれやすい材料です。
アルミ切削加工の難しさ
一方で、アルミ特有の加工上の難しさも存在します。メリットだけでなくデメリットも把握しておくことが重要です。
- 切りくず処理の難しさ:延性が高いため切りくずが長く、工具やワークに絡まりやすい。
- 工具への溶着:アルミは融点が低く、工具刃先に溶着して「バリ」や「仕上げ面の荒れ」を引き起こす。
- 寸法精度の確保:柔らかいため、切削時にワークがわずかに変形し、寸法誤差につながる。
- 表面仕上げのバラつき:条件が不適切だと、仕上げ面が曇ったり粗くなったりする。
これらの難点を克服するには、工具の選定や切削条件、冷却方法などを工夫する必要があります。
工具選定のポイント
アルミ切削加工では、工具選びが品質と効率を左右します。代表的なポイントは以下の通りです。
- 材質:超硬工具やダイヤモンドコーティング工具が有効。アルミ専用の刃物は刃先が鋭く設計されている。
- 刃先角度:すくい角を大きめにとることで切れ味を良くし、切りくず排出もスムーズになる。
- 表面処理:TiNなどの一般的なコーティングはアルミとの親和性が高く溶着を招くため、DLCや無コート工具が適している。
適材適所の工具を使うことで、加工精度と寿命を大きく改善できます。
切削条件の工夫
アルミは鉄やステンレスに比べて高速切削が可能です。条件設定の工夫で、仕上げ品質や工具寿命を高められます。
- 切削速度:高速で回転させることが可能(1000m/min以上の事例もある)。
- 送り速度:過度に小さいと切りくずが薄くなり溶着が起こりやすい。適切な送りを設定する。
- 切込み量:ワークの剛性に応じて調整。特に薄肉部品では注意が必要。
- 冷却方法:切削油やエアブローで切りくず排出を補助し、溶着防止に役立てる。
これらを適切に組み合わせることで、アルミ加工の特性を活かした高効率加工が実現します。
アルミ合金ごとの注意点
アルミニウムには純アルミと多様な合金系があります。合金元素の違いにより、切削性や仕上げ性も変わります。
- 純アルミ(1000系):柔らかく加工しやすいが、仕上げ面が曇りやすい。
- アルミ-銅合金(2000系):強度が高いが切削抵抗も大きく、工具摩耗が進みやすい。
- アルミ-マグネシウム合金(5000系):耐食性に優れるが、やや溶着しやすい傾向。
- アルミ-亜鉛合金(7000系):強度が高く切削性も良いが、硬度があるため工具摩耗に注意。
加工対象の合金特性を理解して、条件や工具を調整することが重要です。
変形やバリへの対策
アルミは柔らかいため、加工後にバリが出やすく、またクランプによる変形も生じやすい金属です。
- バリ対策:切削条件を最適化し、工具を常に良好な状態に保つ。仕上げ工程でバリ取りを計画する。
- 変形防止:クランプ方法を工夫し、ワーク全体に応力が分散するように保持する。
- 薄肉加工の工夫:一度に大きく削らず、複数回に分けて切削を進める。
これらの対策を行うことで、精度の高いアルミ部品を安定して生産できます。
アルミ切削加工の活用分野
アルミ切削は多様な分野で活躍しています。
- 自動車部品:エンジン部品、ホイール、車体構造材など軽量化に貢献。
- 航空機部品:強度と軽量性を両立させるためにアルミ合金が多用される。
- 電子機器:放熱性を活かし、ヒートシンクや筐体に利用される。
- 建築分野:装飾性や耐食性を活かした部材。
用途ごとに求められる品質が異なるため、加工方法や条件設定もそれぞれに最適化する必要があります。
まとめ
アルミ切削加工は「軽量・高精度・高効率」という魅力を持つ一方で、切りくず処理や工具への溶着、寸法精度確保といった課題があります。これらを克服するには、工具選定や切削条件、冷却方法、保持方法といった要素を総合的に工夫することが重要です。
特にアルミ合金は種類ごとに性質が異なるため、加工前に材質を理解することが不可欠です。こうしたポイントを押さえておけば、アルミの優れた特性を最大限に活かし、品質の高い製品を効率的に生産できるでしょう。
いかがでしたでしょうか?
金属加工.comでは、他にも金属加工関連の情報を発信しております。他にも気になる記事がありましたら、是非ご覧ください。
金属加工.comのトップページはこちら↓

関連記事はこちら↓